第206話 紅龍召喚
「
咲耶が静かにその呪文を唱え両手を揃えて前に伸ばすと、
咲耶の体が輝いて炎に包まれ、
前に出した手と体で、まるで大きな龍の口のような形になる。
咲耶が炎に包まれる前から、
三組は防御の姿勢を強め、
さらに咲耶へ向かってウォータボールなどの攻撃を仕掛けてきていたが、
それは咲耶に当たることはなかった。
全ての魔法はことごとく、咲耶の数メートル前で完全に防がれていた。
そして無傷の咲耶は無事に詠唱を終えて、
巨大な紅龍が三組へ襲いかかった。
防御結界も耐性魔法もその意味をなさず、
紅龍は三組の防御結界を飲み込むようにして、
焼き尽くしていった。
防御を諦め、その場から逃げ出したものがなんとか生き残っていたが、
三組はこの紅龍によって壊滅的な被害を受けた。
この隙を逃さず、残存生徒を狙って一組の生徒たちは攻勢を強めた。
流石の咲耶もこの効力な召喚魔法によって魔力が切れてしまったので、
後衛に連れていって休ませる。
「ごめん、みんな、ちょっともうちょっとで全滅できたんやけどなあ」
「何いってるの、咲耶ちゃんすごかったよ」
「須勢理ちゃんありがとうな。でも戦場では最後まで立ってなあかんねん。
あれくらいで全部の魔力をつこうてしまうなんて、
まだまだ修行が足らへんなあ」
「反省は後にして、今はここでしっかり休んどいて。
まだ勝負は終わってないんだからね」
「せやな。須勢理ちゃんのいう通りや。
悪いけど、みんな少し休ませてもらうで」
須勢理は咲耶の疲労を少しでも減らすために魔力を分け与えて、
横にさせて安静にしてもらった。
三組が瓦解していって、
一組は二組と正面から向き合うことができるようになった。
それは二組も同じであるのだが、
大きな違いは、
二組はもう後衛がほとんどいなくなっているということだった。
実を言うと開始直後、
龍人と下倉橋の二人には緑箋がおとおふとみみえんの呪文をかけており、
二人はさらに韋駄天の術で速度を上げており、
一瞬で二組の後ろに陣取っていた。
そして開始とほぼ同時に二組の後方から三組に攻撃を仕掛け、
二組の戦闘を開始させた。
そしてそのあとは隙を見て、
一人一人わからないように退場させていっていた。
龍人と下倉橋の二人にこの任務を任せたいと言ったのは雷御門である。
龍人は入学当初から雷御門に馬鹿にされていたが、
もう今はそんな認識は全く無くなっている。
そして下倉橋も雷御門の変化に気がつき、
自分の行動も改め、
雷御門と共に訓練を続けていて、
その実力もしっかりと高め続けていた。
雷御門は二人の実力をしっかり理解して、
その力を存分に発揮できるように重要な任務を任せたのである。
そしてもちろん組の生徒たちもその気持ちは同様だった。
二人の陽動によって戦局は一組の有利に進むことになったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます