第205話 三学期末大戦争

一組から見て左側に二組、右側に三組が陣取っている。

一組は前衛が二手に分かれて二つの組の正面を睨むように並び、

その後ろに後衛が並んでいる。

二組は一直線に並んで双方を対峙して、

三組は小班に纏まって横に並ぶような陣形を組んでいるようだ。


さあ試合が始まった。

試合開始とともにどの陣営も強化魔法を駆使し、

また前方に結界を並べ、

陰陽師は式神を召喚し、

鬼、カラス、狐、狗、猿などが前衛として組み込まれていく、

と見せかけていたが、

いきなり二組の中から三組へファイアボールの攻撃が飛んだ。

あまりにも急すぎて慌てながらも、

単発の攻撃なので三組はなんとか防御した。


「ちょっとまて、まだだ!」


二組の中から怒号が飛んでいるようだが、

なぜかファイアボールの攻撃が続き、

三組からも反撃が開始された。

もう二組も待ってはいられないので、

一斉に攻撃が始まった。

ファイアボールの応酬である。

魔法使いの戦いは基本的には遠距離での攻撃の撃ち合いになるので、

しっかり防御しておけば意外と対処できてしまうものである。


そんな中緑線は開始直後から魔法探知用の魔法球を透明化して、

ばら撒いていた。

そして雷御門と咲耶に視覚を共有しておいた。

流石に全員と視覚を共有したままにしておくには魔力も経験も足りなかったのだが、

なんとか二人には視覚を共有した。


二組は雷御門の雷を経過して土で避雷針を立てており、

また土壁によって物理的な壁も築いていた。

三組は基本的な魔法障壁を並べて対処しようとしているようだった。

二組と三組が攻撃を仕掛け合う最中、

一組はすでに動き出しており、

陰陽師が召喚した鬼を進行させ、

上空からは八咫烏で攻撃を仕掛け始めていた。

まずは式神による戦闘が開始された。

鬼の直接攻撃を鬼が防ぎながら、

空中の八咫烏は魔法で攻撃していく。

八咫烏は二組の生徒を狙わずに土壁と避雷針を攻撃し、

それを破壊していく。

そしてその瞬間、雷御門が単身二組の前に出て行く。


千辨万雷せんべんばんらい!」


雷が降り注ぐ。

もちろんその攻撃はすでに知られているものの、

不規則に降り注ぐ雷になかなか防御はしにくいので、

少しずつ被弾していく。

しかしそれをしっかり回復しながら、

雷御門を狙って攻撃もしてくる。

しかし雷御門は何も躊躇せずに二組の方へ乗り込んでいく。

そしてそれに続いて雷御門班も二組への距離を詰めていく。


「やるとは言ったけど、一人で出過ぎだって!」


そう叫ぶ緑箋の声を無視して雷御門は突き進んでいく。

雷御門への攻撃は全て未然に防がれていく。

むしろ魔法が出たと思ったら壁に当たるような状態であった。

さらに二組の後ろから支援係が一人ずつ撤退していっていた。

攻撃を防いで回復するはずの生徒がどんどん姿を消していって、

二組は総崩れとなっていった。


一方、咲耶はまだ攻撃を仕掛けていなかった。

三組からの攻撃がほとんどなかったからである。

二組が崩れていくところを見計らって、

二組へ総攻撃を仕掛けていたからである。

二組への攻撃を強めるとともに、

一組への防御を高めており、

なかなか打つ手がなかった、

からではない。


咲耶は開始直後から呪文を詠唱し続けていた。

そしてそれを邪魔されないように防ぎながら、

みんな詠唱が終わるのを待っていたのだった。


咲耶は全ての情報を遮断するように呪文を詠唱し続け、

そして詠唱が終わると、

目を見開いた。

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