第203話 合宿の最後
「まあ自分の中の魔力を制御すると言うのはとても難しいけれど、
これは出力する時も結構大事だからね。
魔力を使う時、使わない時、
しっかりそれを制御することができると、
魔法の正確性や強弱に影響してくるよ」
「確かにそうですね。
でも幽璃先輩のようになるのは難しいですよ」
「まあね。簡単に極意を掴まれてもこまっちゃうけど。
緑箋君は魔法の制御に関しては結構上手だから、
少し練習し続けると効果が出ると思うよ。
あんまり流行ってないけど、
魔力を無にして実力を隠すって言うのは、
もしかしたら結構有効かもしれないね。
魔力を隠し続けて、
攻撃する時にだけ使う方が効率出来だしね。
私も今度練習してみようかな」
飽くなき向上心はとても大切である。
また新しいことが閃いて幽璃は楽しそうにしていた。
「でもこういう気配を消す技術も大切ですよね。
今度どういう戦いになるかわかりませんから」
「そうだねえ。
敵に見つからないと言うのはそれだけで優位に立てるからね。
敵に見つからなければ攻撃もされないし、
こっちから一方的に攻撃もできるわけだからね。
最初の一撃でしっかり刺すと言うのは、
狩りでも大切だからね」
「手負にさせてしまったら、
思わぬ反撃を受けてしまいますからね」
「その通りだよ緑箋君。
今度一緒に狩りに行くかい?」
「それはぜひご一緒したいですけど、
一週間動かないとかは無理ですよ」
「いやー緑箋君ならいけるんじゃないかな」
そう言って二人で笑い合っていると、
徐々にみんなも起きて応接間に集まり始めた。
なんだかんだ言ってみんな早く目が覚めたようである。
緊張感もあるのだろう。
そんな中一番遅く起きてきたのは天翔彩だった。
昨日の酒がまだ残っているようで、
囃し立てられると頭に響くようだった。
朝食を食べた後、
一行は今度は山を案内してもらうことになった。
とても晴れて暖かい日差しが降り注ぐ中、
まだ日陰にはうっすらと雪が残ってはいたが、
春の息吹を感じる新芽なども生え始めていて、
とてもいい散策日和となった。
お昼は山の頂上付近で用意してもらったお弁当をみんなで食べた。
北の方には天橋立までよく見えた絶景を堪能しながら、
和気藹々と話が弾んだ。
分けてもらえるだけのものをみんなで採集しながら、
三年生から情報を聞き、
一緒にみんなで山の中を散策できた。
そして時間はあっという間に過ぎて、
日が沈む前に一行はまた鉱山に戻った。
卒業まではまだ日があるとはいえ、
こうやって薬学研究部が揃っての大きな活動はこれで最後になるだろう。
みんなはそんな思いを胸にしまいながら、
笑顔を絶やすことなく、楽しんでいた。
準備が終わって城から出ていくと、
なんと鉱山のみんなが待ち構えていた。
子供たちは駆け寄ってきて、
生徒たちと抱き合っていた。
「卒業しても、いつでもまた来てください」
茨木童子は日万里に声をかけた。
日万里は大勢の鉱山の人々に向かって声をかけた。
「今回、こんな素敵なおもてなしをしていただいて、
本当にありがとうございました!
私たち三年生はこれで最後にはなりますが、
最高の思い出になりました。
また遊びに来させてください。
今回は本当にありがとうございました!」
日万里が深々と頭を下げると、
大きな拍手に包まれた。
そして子供たちにもみくちゃにされて、
みんな笑顔に包まれていた。
いろいろなお土産ももらっただけではなく、
たくさんの思い出をもらって、
薬学研究部三年生の最後の合宿が終わった。
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