第202話 気配を消す方法
部屋に帰ってすぐ眠ってしまった緑箋は、
朝早くに目が覚めてしまった。
緑箋は応接間へ行って飲み物を取ってきた。
そして窓際の席に向かうと、
そこにはすでに幽璃が座っていた。
どうやら寝てはいないようだった。
「おはようございます」
「いやあおはよう、緑箋君。
早いね」
「ええ、あれからもうほんとにぐっすり眠ってしまったんで、
早く目が覚めてしまったみたいです。
幽璃先輩はずっとここに?」
「いやいや、流石に私もしっかり寝たよ。
私は単純に朝は早い方だからね」
「日が上ると同時にですか?」
「まあもう少し早いかな。
そういう風に体ができてしまってるんだよ」
「昨日もほんと凄かったですもんね。
僕、魔法探知してみたんですけど、
人として探知できませんでしたよ。
あれ何か特別なスキルなんですか?」
「うーん説明は難しいところだね。
特別なスキルではないんだが、
特別な能力とは言えるかもしれないね」
「それってどういうものか教えてもらえますか?」
「ああ、もちろん全然構わないよ。
簡単にいうとものだと思い込むことだね」
「それはそうなんでしょうが、
普通できませんよ」
「ははははは。
おっと声が大きいね。
緑箋君面白いこと言うじゃないか」
緑箋は何も面白いことを言っていない。
「まあ魔力を感じさせないと言うのは基本的には難しいんだよね。
魔力はあるものだから。
それを消すと言うのはできないと思ってもらっていいと思う。
ただ魔力の質を変えることはできるんじゃないかと思うんだ。
魔力と言っても様々だからね。
「質を変えるですか?」
「そうだなあ。
緑箋君、さっきここにきた時、
私に気が付かなかっただろう?」
「そういえばそうですね。
全く気がつきませんでした」
「まあ朝っぱらから部屋の中で魔法探知してたら魔力がもたないからね、
そんなこと気にしていないだろう。
でも私はいたわけだから、魔力がなかったわけではない。
あるけど気がつけない、そう言う風にしたらいいわけだよ」
「なるほど、言ってる意味はわかりますが、
それできませんよ。
だって相手の意識から消えるってことでしょう?
相手の意識を誘導するってめちゃめちゃ難しくないですか?
幻術使いならまだしも」
「まあそうだね。
でもできないわけじゃないんだよ」
そういうと幽璃がすーっと目の前から消えた。
「ちょっとほんとに消えてるじゃないですか。
幽璃さん、どこ行ったんですか」
消える前と同じ格好で幽璃がすーっと現れた。
「まあね、人間の意識って言うのは結構あやふやなものなんだよ。
見えてると思っているのは見せられているものなのであって、
それがないと思わせられたら、
現実にあっても、
見えなくなってしまうものなんだよ。
まあこれは人に活かそうと言うよりも、
狩りの時のために磨いた技だけどね」
「いやー目の前で見せられてるのに信じられませんね」
「姿を消す魔法もあるけれど、
姿を消しても動物には気がつかれてしまうからね。
やっぱり気配を消さないと狩りはできないから、
まずは動かないで周囲のものや大気と同化するような想像力だ大切だね。
森なら動かないだけで結構気配を消せるものだよ」
「やっぱり幽璃先輩だけしかできないんじゃないですかね」
「そんなことはないと思うけどなあ。
緑箋君気配消すの好きでしょ」
「まあ確かにそう言うところはあると思います」
好きというかそう言う性分になってしまったと言うのが、
正確なところであろう。
結構人に興味がないようで幽璃はよく人を観察している。
微かな違いに気がつかなければ狩りではやっていけないのだ。
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