第201話 鬼鬼優勝

最後の一人となって鬼鬼は終了した。


「では最後の方出てきてください!」


そういう茨木童子の呼びかけに出てこなかった。


「もう鬼鬼は終わりました。

最後の一人の方出てきて大丈夫ですよ!」


そういってもまだ誰も出てこなかった。

この呼びかけが罠だと思っているのかもしれないが、

むしろこれだけの鬼がいる中、

まだ見つからずにいると言うのが凄すぎるのだ。

普通もう見つかってしまうはずである。

もしかしたら反則なのかとも思われて、

建物の中も探そうと思ったところで、


広場の真ん中の何もないはずのところから、

急に幽璃が現れた。


「私が優勝ってことでいいのね?」


広場の一同はあまりの光景に呆気にとられていて、

誰も声を出せずにいたが、

幽璃が両手を高々とあげると、

子供たちからすごいすごいと歓声が上がり、

その歓声が赤い服の鬼たちに波のように広がって、

幽璃を讃える歓声に包まれていった。


「さあ!どうぞこちらへ!」


みんなに促されて幽璃は壇上に上がる。


「と言うことで今回の鬼鬼の優勝は、

客人の一人、影万事幽璃さんでした!

おめでとうございます!」


「ありがとうございます。

優勝しちゃいました!」


幽璃は嬉しそうに壇上で飛び跳ねている。


「おめでとうございます。

幽璃さんには優勝賞品として、

幽璃さんが欲しい武器と防具をセットで差し上げます!

あとで要望をお聞かせください」


「わーほんとですか!

めちゃくちゃ嬉しいです。

狩りに使えそうなものをお願いしようと思います」


「何なりとお申し付けください。

最高のものをお届けしたいと思います!

さあ改めて、影万事幽璃さんに大きな拍手をお願いします!」


幽璃は大きく手を振りながらみんなの声援に答えていた。

隠密が得意でありながら、

目立つのも相当好きみたいである。


大きな催し物が終わって、宴も終了となった。

もっと飲み足りないと思う人もいるようではあったが、

どちらかというと鬼鬼で疲労困憊になって、

もういい感じで眠たくなっている人の方が多かった。

子供たちは一目散に家に帰って行った。


酒呑童子が薬学研究部のみんなの前にやってきた。


「今宵は宴に付き合ってもらって感謝する。

久しぶりにこんなにみんなが楽しそうに笑い合うことができた。

これもみんなのおかげじゃ。

生きとし生けるもの全てが楽しそうに笑って過ごせるように、

これからもここを守り抜いていきたいとまた思わせてもらった」


いい感じに酔っている酒呑童子も楽しそうだった。

そして緑箋の前にやってきた。


「そう構えなくとも良い。

今日はもう何もせんわ。

だが緑箋、次の機会ではしっかり胸を貸してもらうぞ」


「いやいや、貸してもらうのはこちらの方ですよ」


「そんななりしてあの魔力だからなあ。

全く油断も隙もないやつじゃな」


酒呑童子は豪快に笑った。


そして薬学研究部の一行も、城の部屋へと帰って行った。

楽しさと心地の良い疲れとがみんなを眠気に誘っており、

みんな部屋に分かれて行った。

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