第200話 魔力探知も万能ではない
緑箋はまた魔力探知を試みていた。
結果として失敗だった。
なぜならみんなの魔力の違いがないからだ。
敵と味方が混同している場面において、
魔力探知をしてもどれがどれなのか結局わからないのだ。
自分たち以外の敵が奥に隠れている、
また自分たちとは明らかに違う魔力を纏っている、魔族とか、
そういう違いがあるときにはかなり効果的だが、
今のように敵と味方が混在している戦場での効果が薄いということが、
今初めてわかった。
これもまた経験である。
「敵味方が混在してると、結局みんな動いているものでしかないから、
どれが敵かって見分けるのは難しいみたい」
「そうかーなかなかうまくいかんもんやなあ。
魔法っていっても万能やあらへんもんね」
そんなことを咲耶に説明しながらも、
緑箋はもう一つ試したかったことをやってみた。
敵と味方が混在している中、
その視覚情報と魔力探知情報を重ね合わせて、
自分の視覚を変化させてみる。
単純に言えばサーモカメラのように、
赤の鬼の資格情報と、それ以外のものとに分けて、
白の敵の情報を輝かせて見えるようにしてみようと思ったのだ。
これは意外とうまくいくと思いきや、
魔力情報が動いていない場合、
それが人なのか物なのかを判断するのがまだ難しい。
魔力の通過や反射の具合を分けて探知する経験が乏しいのもある。
ただその中に明らかに人が隠れているような魔力を一つ掴むことができた。
緑箋は周りにいる子供たちに、
あの建物の壁に一斉に突撃してみて欲しいとお願いした。
子供たちは何かあるかもと喜んで一斉に壁に突撃した。
子供たちが壁に走り出すと同時に、
その壁の一部が剥がれるように捲られると、
そこから一人の男が走り出した。
颯太郎である。
しっかり魔法で擬態して壁に隠れていたのだ。
忍法隠れ身の術である。
魔法さえ使えれば、光学迷彩のようなこともお手のものである。
今回は魔法探知に引っかかってしまったので見つかってしまったが、
見た目ではこれほどわかりにくいものもない。
子供たちの隙をついて逃げようと思った颯太郎だったが、
流石の素早さも多勢に無勢で捕まって鬼に変えられてしまった。
「こら、緑箋!先輩やぞ!」
そんなふうに抗議する颯太郎に咲耶がこう答える。
「先輩程の実力者に、
手を抜いて対処できるって、
ほんまに思ってはりますか?」
「ま、まあそれはそうやなあ」
「こんなときに手抜きするような後輩を育てるような、
先輩じゃないですよね?」
「わかったわかったって。
変なこと言うてすまんかった緑箋!」
緑箋は何もいっていないのだが、
颯太郎は頭をかきながら項垂れていた。
緑箋たちが颯太郎と戯れて遊んでいるうちに、
他の人たちも鬼に変わっていき、
ついに残りは一人となってしまった。
優勝の決定である。
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