第196話 しばし休憩

たくさんのお土産をもらって、

一通り見学し終わると、

もう夕方になっていた。

一行は城の部屋まで戻ってきた。


「長い間見学していただいてありがとうございました。

しばしこのお部屋でおくつろぎ頂きまして、

お食事の準備ができましたら、

またご案内いたします」


そう言って茨木童子は部屋を出て行った。

かくじ部屋に戻って荷物を片付けた後、

また広間にみんなが集まってきた。

三年生はやっぱりもらった短刀を持ってきて見せ合っていた。

刃先は同じような作りだが、

柄はそれぞれ全然違う作りになっているようで、

あしらっている宝石も違うようだった。

それぞれに合わせて作ってくれているようで、

これまた手間がかかっている。

鞘は至って普通の作りではあるが、

それが逆に柄の豪華さを際立たせている感じもして、

深い芸術品のような趣を持っていた。


「これはほんと美しいよなあ」


こう言うものを見たら饒舌になって止まらないはずの日万里は、

うっとりと短刀を眺めてはため息をついていた。

それほど魅せられているのだろう。


「いやほんと、使うのが勿体無いくらいだなあ」


幽璃は使う気まんまんのようである。


「これ、狩りで使うの?」


金光は信じられないという顔をしている。


「そりゃそうでしょう?

道具は使ってなんぼでしょう?」


「いや、まあそうだけどさ。

これ狩りで使ったら台無しじゃない?」


「まあ金光はさ蒐集物としての価値しか見てないかも知れないし、

それはそれで否定しないけどさ、

この短刀は使ってこそだと思うよ。

多分飾りっぱなしじゃもったいない道具でしょ。

例えば、すごく書き味がいい筆があったとして、

それもったいないから使わないっていう方がもったいなくない?

使って綺麗な文字書いた方がいいじゃない」


「それは確かにそうだよ。

俺だってそれくらいわかってるけどさ、

この短刀は流石に使えないよ」


「まあこの短刀の凄さはわかってるよ。

だから金光は金光の好きにしたらいい。

私はこれは絶対に実践で使いたいな。

もし何かあったときにこの短刀を使わなかった方が後悔すると思うからね」


金光はわかったようなわからないような顔をしているが、

やっぱりもったいないなあという気持ちは拭えないようだった。


「日万里先輩はどうするんですか?」


華蓮が質問する。


「私は、ずっと見てる」


日万里は完全に上の空だがなんとか現世に心を留めながら答えた。


「使わないってことですか?」


「見てる」


日万里は道具として使う使わないではなく、

存在としてあることをすでに楽しんでいるのだろう。

別に箱にしまっておくわけではなく、

しっかりと観察して楽しみたい様子である。


そんな話をしていると茨木童子が迎えにきてくれた。


「準備ができました。

どうぞこちらへ」


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