第195話 更なる贈り物

薬学研究部の三年生に贈り物をした後、

大山田は魔法銀の工場の説明を始める。


「ではこのまま魔法銀の加工の工程の方を見ていただきたく思います。

魔法銀はかなり脆くて砕けやすいのですが、

砂状にしたあと、熱を加えながら他の鉱物を混ぜてこねることで、

独特の光沢と粘りが生まれます。

そしてそれを伸ばしていきます。

伸ばして伸ばして糸状にすると、

魔法銀の糸となります。

この糸はしなやかで伸びる上に切れにくく、

そしてもちろん身に付けている人の魔力を高め、

魔力に抵抗力もあるという特性を持っています。

糸状になった魔法銀はもう通常の糸と遜色なく加工することができます。

以前一年一組の皆さんのところには、

魔法銀の布についてご説明させていただいたこともありますが、

魔法使いにとってはとても重宝するものになっていると思います」


「その節は本当にありがとうございました。

とても参考になりましたし、

楽しく服を作ることができました」


須勢理は学園祭の時のことを思い出して嬉しそうに感謝を伝えた。


「お役に立てて何よりです。

魔法銀で作られた服も、昔よりは安価で提供できるようになっています。

魔法銀の採掘が安定していることが大きいと思います。

もちろん作業の熟練度も上がっていると思います」


大山田の元に魔法銀の布で作られた服が運ばれてきた。


「通常の制服に加えて、マントや帽子、手袋や靴下なども作られております。

単純に着心地もいいとご好評をいただいています」


「これね、狩りの時にもいいんですよね。

暑さ寒さも防いでくれるし、

自分の気配を断つ時に上手に魔力を扱えるので重宝しています」


幽璃が愛用しているように、

今や魔法銀の布は魔法使いには欠かせない素材となっている。


「効果の面はもちろんですが、

これ本当に細かい装飾も美しくできるので、

おしゃれに着こなせるのが最高ですよね」


華蓮も愛用しているようだ。


「そして今回は皆様に合わせて作らせていただきました、

こちらを贈らせて頂きたいと思います」


用意されたのは魔法銀の布で作られた着流しだった。


「こちらは普段着としてもお使いいただけますし、

戦闘服の上に羽織っていただいてもいいかと思います。

もちろん先生の分もございます」


光沢は抑えめだがどことなく高貴な印象のある手触りの良い着流であった。


「流石にこれほどのおもてなしを受けるわけには……」


天翔彩がそう言いかけるのを抑えるようにして茨木童子が言う。


「先生。これはもう皆様のために作ったものですので、

こちらの押し付けになってご迷惑かも知れませんが、

今回は何も言わずに受け取って頂きたいと存じます」


そう言われてはいらないとも天翔彩は言えなくなってしまう。


「わかりました。

今回はありがたく受け取らせて頂きます。

本当にありがとうございます」


薬学研究部全員でありがとうございますとお礼を言った。


短刀をもらった三人は短刀に夢中だし、

その横で颯太郎と幽璃と華蓮は触らせて欲しいとお願いしていたし、

他の面々も着流しを羽織って、似合うかどうかと見せ合って喜んでいた。


実のところ天翔彩もこっそり羽織って似合うかと羽織った自分の体を見ていたが、

そこは生徒に見つかって似合ってるとみんなに褒められて嬉しそうだった。

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