第194話 卒業記念
大山田は奥から持ってきた紙包を受け取る。
「
こちらをお受け取りください」
大山田は三人に紙包を渡していく。
「気に入っていただけたら幸いです」
三人はその紙包から中身を取り出す。
中には銀色に輝く短刀が入っていた。
白銀に輝く短刀の刃は鋭利でありながら、美しい曲線を描き、
光を受けて神秘的で妖艶な輝きを放っていた。
刃先から魔力が滲んでおり、空間を震わせ、
周囲に微かな波紋を広げているようだった。
柄の部分には、宝石が煌めき、
その色彩はまるで幻想的な夜空の星々のように美しく、
見る者を虜にしてしまうほどの魅力があった。
この短刀はただの武器ではなく、魔法の力を宿していた。
「これは美しい」
「いやこれには値段がつけられませんね」
「短刀は狩りにもぴったりです。
こんなに素晴らしい短刀は見たことがないですよ」
三者三様だが、三人ともその短刀に心を奪われていた。
もちろん三人だけではなく、
見ているだけの他の生徒たちにもとても魅力的に見えていた。
「これは白鋼と魔法銀を実験的に組み合わせて作った短刀です。
まだ実験段階なのであまり強度がないところもあるのですが、
その中でも成功作と言ってもいい出来のものではあります。
この武器はまだ世の中に出回っていませんので、
大いに使っていただいて、
その使い勝手を教えていただけたらありがたいです」
大山田はそう説明した。
「このような素晴らしいものを本当にいただいてもいいんでしょうか?」
日万里は想像もしていなかった贈り物に驚愕していた。
「確かに今はまだ貴重価値があると言えるかもしれませんが、
もうすでに量産段階に向かって開発は進んでおりますし、
正直言いますともう少し練度を上げたほうがいいと思うところもありまして、
贈り物としては申し訳ないのですが、
試作段階のものということで、今回お受け取りいただけたら幸いでございます。
先の洞窟調査におきまして、
薬学研究部の皆様方には本当にお世話になりましたし、
日万里様にもたくさん助けていただきましたので、
今回ご卒業される前に、こちらの方で合宿していただけるということで、
せめてもの恩返しということでございます」
大山田は深く頭を下げた。
「大山田さん、頭をどうかおあげください。
このような貴重なものをいただいて、
私たちの方が恐縮しております。
今回、このように素晴らしい卒業祝いをいただけること、
本当に感謝しております」
日万里に合わせて他の二人も頭を下げた。
周りからは拍手の雨が降り注いだ。
短刀はそれを祝福するように、
周りの光を反射して、
輝きを増しているように見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます