第192話 謎の洞窟の奥

飛んでいった光の玉が壁の中から魔力を送ってくる。

緑箋はその魔力の感度を調節し、

岩の中の魔力の濃度を感じて脳内で視覚情報と合わせる。

岩の中がまるで透けているかのように見えてくる。

もちろんまだ朧げな情報で、

ぼんやりと普通とは違う魔力を感じられる程度である。


事前に聞いていたように前方の小さな穴を辿ると、

その奥に少しの空間が広がっている。

さらにその奥にも小さな穴が続いていて、

その穴を辿っていくと、

かなりの巨大な空間が広がっていた。

そしてそこには煌輝石と似ている魔力が多数感じられた。

なんとかここまではわかったが、

距離的にも今の緑箋にはこれが限界であった。


「煌輝石と似たような魔力を感じることができました」


おおーと一行はどよめいた。


「先ほど言われたところからさらに奥に進むと、

巨大な空洞があります。

その大きさは今の私ではちょっと捉えきれませんでした。

ただそこに煌輝石と似たような魔力を感じました」


緑箋は今感知した印象を詳しく大山田たちに教えた。


「ありがとうございます。

とても参考になりましたし、希望も見えました。

調査を続けてみたいと思います」


大山田は頭を下げた。


「すみません、まだ魔法探知は練習段階ですので、

もしかしたら全然間違ってるかもしれませんので、

あまり期待せずにいてくれたらありがたいです」


「承知しております。

でもおそらくあると私は考えていますよ」


大山田はニヤリと笑った。

あまり信用されると困るなあと緑箋は思ったが、

感じたことは感じたのだから仕方がない。


「ではこれから煌輝石が大量に採掘できるということがわかったので、

皆さんにこれをお渡しします」


大山田はそういうと煌輝石のかけらを首飾りしたものを、

みんなにプレゼントしてくれた。


「大山田さん。まだ決まったわけではありませんよ?」


「ははは、わかっておりますとも。

これはもともと皆さんのお土産にと用意しておいたものです。

これだけ小さいカケラではどうすることもできませんからね。

この程度のカケラは結構見つかっているのです。

なのでやはりこの山に煌輝石があるような気もしているのですよ」


「そうだったんですね。

僕の魔法探知だけでこんなことになっては困ってしまいますから」


緑箋はほっとした。

煌輝石のかけらだけではそれほどの効果はないが、

簡易的に魔族の攻撃に対する抵抗力を高めることはできそうである。

首飾りというのも便利で使い勝手がいい。

キラキラと虹色に輝くのもとても綺麗で、

ダイヤなどの宝石とはまた違った魅力ある石だった。


「細かく研磨するというのもなかなか難しいので、

煌輝石のかけらそのままなんですが、

これはこれで綺麗かなと思っております」


女性陣、特に日万里はずっと煌輝石に囚われているし、

みんな喜んで首にかけている。

男性陣も意外と綺麗に輝いているので嬉しそうだった。

隠密の任務には向かなそうだが、

その時は外せばいいだけである。

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