第182話 穏やかな日常

三ヶ日も過ぎると正月っぽさはなくなり、

生徒たちもちらほらと寮に帰って来始めていた。

おせち料理は全てなくなってしまってはいたが、

差し入れに持ってこられた食材が大量のあるため、

餅料理などもたくさん振る舞われた。

いつもよりも豪華な食事に、

寮生たちは舌鼓を打った。

実家でも美味しいものを食べて来たとは思うけれど。

意外と守熊田もいつもとは違った献立を作ることができて楽しそうだった。


休みの間は緑箋も食事作りを手伝ったりもした。

一人暮らしが長かったから、

それなりに自分が食べられる料理は作っていた。

餅料理でいえば餅グラタン。

牛乳に粉とバターで炒めてホワイトソースっぽくして、

餅を並べてそこにホワイトソースをかけて、

上にチーズを乗せて、

ファイアボールで焼くだけである。

これが意外と好評だった。

もちろん学園祭でも作ったオムライスもなかなかの人気料理となっている。

休みは寮生も少ないので、

他の生徒たちも厨房に入って自分で料理を作ったりして楽しんでいた。

電子レンジはもちろんないけれど、

どこにいても自分で火が出せるというのはなかなか心強い。


牛乳があれば魔法で撹拌したり、

振ったりすることでチーズやバターを作ることも簡単だし、

意外と料理の幅は広くなった。


守熊田は寮に来る前は戦場にいたわけだが、

戦場でも色々と食事を作ることもある。

階級が上になれば流石に食事係を任されることはなくなるが、

暇な時や休日などは守熊田が自ら料理を作ることもあったそうだ。

それも意外と好評で、

守熊田が食事を作るときには、

他の部隊からも食べに行きたいという要請が来たりしたそうだ。

そういうことで求められることもあって、

守熊田も喜んで料理を作っていたらしい。

もともと料理を作るのが好きだったということもあったのだろう。


ちなみに遼香も新人の頃は食事当番をしたことが当たり前にある。

ただ遼香の作る料理はまずいわけではないが美味しいわけでもなかった。

おいしさを全く求めておらず、

魔力増強に関してのことのみを目的とした献立だったようで、

徐々に遼香の料理担当は減っていったそうだ。

今でいう筋トレの食事という感じだろう。

遼香にとって食事は楽しみではなく、

魔力を鍛えるという意味で大切だったようである。


とはいえ、最近は遼香の食事献立が意外と好評になって来たようで、

魔力増強を目的として鍛えている人々に好評だそうだ。

こちらの世界でも食事の好みというのは色々である。


休みもあと数日を残すことになり、

生徒たちも続々と寮に戻ってきていた。

そして咲耶も寮に戻ってきた。

食堂で楽しそうにみんなと話している緑箋を見かけると、

咲耶はずんずんと音を立てるような勢いで、

緑箋の前にやってきた。

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