第181話 宴の後
残ったのは天翔彩と守熊田と緑箋の三人になった。
基本的な片付けや掃除は終わっている。
あとは細々した片付けと簡単な皿洗いくらいが残っている。
「ほな、片付けるか」
守熊田は寮長に戻って皿を洗っていく。
一枚一枚洗うのではなく、
魔法でじゃっと洗えるので、
食洗機のようにして大量に皿が綺麗になっていく。
この光景はいつみても面白い。
乾燥まで一瞬で終わっていく。
乾いたお皿も魔法でふわふわと飛んで、
元の位置まで戻っていく、
場所記憶の魔法がついているので、
ささっと片付けられていく。
珍しく使ったお重などは普段の場所とは違うところにあったので、
それは緑箋と天翔彩が個別に持っていく。
まあこの程度は簡単である。
守熊田がお茶を淹れてくれた。
三人はまた食堂で座っている。
「いやーほんと大変でしたね」
緑箋は誰ともなく呟く。
「まさかあんなふうになるとは私も思ってなかったんだよ。
まあ遼香が私だけ連れてくるはずがないって、
今考えればわかってはいたんだが。
久しぶりすぎて忘れてしまっていたよ」
「まあええんちゃうかな。
正月、これだけ盛り上がれたんやから、
今年はいい年になるちゅうことや」
転生祭も守熊田も楽しんではいたようだが、
疲れも頂点に達している。
「まあいろんな人が集まって楽しかったですし、
いろんな人が一堂に介して、
交流ができたのも良かったのかもしれませんね」
「そうだなあ。
あの面々が勢揃いするなんて今後ないかもしれないからな。
というか集まれっていっても集まることがないものばかりのはずだよ。
正月だからといってすごい会になったのかもしれんな」
「ほんまやなあ。
もしかしたら、歴史の教科書に載ってしまうかもしれへんな」
「日本の最高魔力が集まった歴史的会合ですか?」
緑箋が冗談っぽく言う。
「せやせや。
でもほんまにこれは歴史的事件やったかもしれへんなあ」
「集めたのが緑箋君って言うことになりそうね」
天翔彩も乗ってきた。
「教科書に乗れるなら本望ですよ」
三人は冗談として笑い合っていたが、
それが実現することになるとは誰も思っていなかった。
ふあああああと天翔彩は大きな欠伸をした。
「さあ、流石に私も眠くなってきましたから、
もう帰ります。
ごちそうさまでした」
「いやーほんとお疲れ様でした」
「ほんまやで。
でも久しぶりにぎょーさん話せて楽しかったな」
「ほんとです。
また先輩後輩として話せるようになって嬉しいです」
「はっはっは。
結構ボロ出さへんように頑張ってたんやけどな」
「それはお互い様ですよ」
「そうやな」
天翔彩と守熊田はあまり会う機会もなかったようだが、
会ってもよそよそしい感じだったのだろう。
現に緑箋を連れてきた時も寮長と先生という立場にしか見えなかった。
その壁が壊れたとしたら、
今回の宴は良かったのかもしれない。
「じゃあ緑箋君、先輩、
今年もよろしくね」
そういって天翔彩も帰って行った。
寮はまた守熊田と緑箋の二人だけになって静かになった。
二人とも同時に大欠伸をした。
「さあ、緑箋もねーや。
わしも限界や」
「そうしましょう。
おやすみなさい」
「はい、おやすみ」
二人は部屋に戻って寝た。
緑箋が次に起きたのは二日の夕方だった。
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