第179話 戦いの結末
灼熱の小さな太陽が周りを焦がし始める。
すでに緑箋は
火に対する耐性をつけているので問題はない。
もちろん玉藻前も火耐性持ちではあるが、
その耐性を小太陽の熱量が越えようとしていた。
「このままでは持たない……」
玉藻前が小太陽を投げ出そうと試みたところ、
横から遼香が玉藻前の脇腹を殴りつけた。
玉藻前が吹き飛んで退場した。
その瞬間緑箋は小太陽を横に吹き飛ばして消滅させた。
すでに酒呑童子と茨木童子は退場していた。
緑箋の狙いは別に火の玉で攻撃することではなく、
玉藻前の攻撃を受けることで、
玉藻前の回復呪文をやめさせることだった。
玉藻前の回復がなくなったことで、
遼香は酒呑童子と茨木童子の体力を削って、
二人を退場させていた。
そして緑箋の火の玉の対応に追われ続けていた玉藻前は、
もう隙だらけになっていたというわけだ。
妖怪たちは全員退場となった。
遼香が緑箋に近づいてきた。
「いやー流石だな緑箋君!」
そう言いながら拳を突き出してきた。
「吹き飛ばすのはやめてくださいよ」
不適な笑みを浮かべる遼香の拳に緑箋は拳を合わせた。
緑箋が吹き飛ぶことはなかった。
少しだけ不安だったことは内緒である。
緑箋と遼香は守熊田と天翔彩の方へ駆け出す。
天翔彩と守熊田もゆっくりとこっちへやってきた。
四人は肩を組んでお互いを称え合った。
「ちょっと、守熊田寮長、防御が凄すぎませんか?
そりゃあ攻撃一個も当たらなかったですよ?
あの人数本当に捌けるんですね」
緑箋は今回防御のことを考えることが一秒もなかった。
敵に攻撃をされてもこちらは何も考えずに攻撃を続ければ良いだけだった。
まるで無敵状態で戦っている感じだった。
緑箋は寮長とたまにトレーニングを付き合ってもらってはいたものの、
これほどまでの実力者だということは全く知らなかった。
「緑箋とのトレーニングがええ感じやったからな。
まだまだ腕は錆びてなかったっちゅうことや」
「ほんとに、いつでも戻ってきてくれていいんですよ、先輩」
「今は寮があっとる。
みんなから刺激をぎょーさんもらえるからなあ」
守熊田は笑った。
「天翔彩先生もすごかったですね。
もっと回復のこと教えてくださいね」
「それはもちろん構わないが、
今回はほぼ回復魔法は使ってないぞ」
「確かに、全部寮長が防いでくれましたからね。
でも強化に状態回復は本当にすごかったですよ」
「まあ昔とった杵柄だな」
「いやー本当にすごかったです」
緑箋は守熊田と天翔彩の実力に驚いていた。
「いや私は!」
遼香は不満そうである。
「いや遼香さんの実力は知ってるんで。
本当はまだまだなんでしょ?」
「はっはっは、言うようになったじゃないか緑箋君」
緑箋に褒められるので素直に遼香は喜んでいた。
可愛いところもある。
鬼神の如き強さと、この明るさが遼香の魅力である。
トレーニングルームから出ると、
大嶽丸が緑箋の元にやってきた。
「遼香から話は聞いていたが、これほどとは。
守熊田がいたからという言い訳はしたくないが、
今度は二人で戦ってみたいですね」
「いやいやいや、結構ですよ。
平和に楽しみましょう」
緑箋はこんなに強敵と戦うのは懲り懲りだった。
でも楽しかったのも事実であった。
戦いが終わってその感想で場は盛り上がった。
結局あれだけの戦いをしたのに、
またみんなは笑顔に包まれていた。
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