第11話 寮を探検
二人は寮を探検することにした。
とはいっても、
緑箋は端末の中に寮のマップがあったことを知っている。
「マップ確認してもいい?」
「うーん、初めての驚きを大事にしてほしい気もすんねんけど、
まあそっちの方がわかりやすいか。
端末にも慣れた方がいいかもしれないしね」
「ありがとう」
緑箋はマップを開いて確認しながら探検を続けることにした。
この寮は五階建てで中等部専用の寮らしい。
五階から三階までは寮生の部屋になっている。
各寮生の部屋が廊下に沿って配置されているようだ。
ところどころにオープンスペースがあって、
椅子とテーブルが配置されている。
コミュニケーションが取れるようになっているようだ。
二階は各種施設が取り揃えられているらしい。
会議室、トレーニングルーム、
プレイルームや図書室なんかもあるらしい。
二人はトレーニングルームを覗いてみる。
緑箋は筋トレの道具が置いてあるのをイメージしていたが、
部屋の中にはまた扉が並んでいた。
「ここで魔法のトレーニングができんねんで」
「そうなんだ」
ちょっと入ってみようと咲耶が扉を開ける。
扉の中は明らかに外の印象からは程遠い、
無機質だがあまりにも広い空間が広がっていた。
「ここは端末で色々設定できんねん。
場所とか、能力値とかも色々変えて、
戦ったり、新しい魔法を実践したりできんねんで」
「なるほど。
仮想現実を現実にしたみたいなものなんだね。
いやじゃあそれはただの現実なのか?」
緑箋は混乱しているが、
咲耶は緑箋の発言にもっと混乱している。
「仮想現実?」
「いや、なんでもないよ。
とにかく実践形式で魔法が使えるんだね」
「そうそう。
基本的にここで魔法を使って戦っても、
肉体には影響がないから、
思いっきり魔法が使えるんやで」
「それはすごいな」
ある意味、元の世界よりも進歩している。
「明日はここで一緒に魔法の特訓やね!」
なぜか咲耶も特訓することになっているが、
緑箋はツッコむのをやめている。
トレーニングルームを出て、
二階の施設を周り、
一階へ。
一階はエントランスや食堂、
来賓室や客室、お風呂や寮長の部屋などがあるらしい。
エントランスの像は相変わらず荘厳な佇まいをしている。
緑箋はこの像に魅入られているようだ。
「ご飯はどうする?」
突然後ろから声をかけられて、
二人はびっくりした。
もちろん後ろには熊が立っていた。
いや守熊田寮長が立っていた。
そういえばこの世界の食事について緑箋は疑問に思っていた。
しかし咲耶さんがいる手前、話を聞くこともできずにいた。
そしてそんな緑箋の思いを読み取ったかのように、
咲耶は話を進めた。
「そうやね、そろそろ疲れたし、
緑箋君も大変だったろうし、
ご飯は食べとこうか」
緑箋も依存はない。
「よし、じゃあ食堂においで。
今日は簡単なものしかないけど勘弁してや」
「ありがとうございます」
二人は声を揃えていうと、食堂へ行った。
食堂にはテーブルと椅子が並んでいて、
カウンターに食事が並ぶ、
ビュッフェスタイルのようだ。
しかし今は何も並んでいないので、
カウンターで食事を受け取る。
ご飯と味噌汁らしきものと焼き魚とサラダが並んでいる。
この世界でも箸が使えるようだ。
カウンター近くの席で二人は対面に座る。
「おかわりもあるから、
食べたいならいってな」
「ありがとうございます」
二人はまた声をそろえる。
「じゃあ食べよう」
咲耶は嬉しそうにいう。
「いただきます」
二人はまた声をそろえる。
いただきますは一緒なんだなと緑箋は安心した。
「美味しい」
緑箋は味噌汁らしきものを一口啜って驚いた。
出汁の美味しさが尋常じゃないくらい出ている。
なぜか咲耶は自慢げに頷いている。
「たくさん食べて、魔力を鍛えなあかんで」
緑箋は食堂に貼られているポスターを見ながらご飯を食べている。
簡単にいえば、
どうやらこの世界でも食事は食べるようだが、
食べたものは腹で分解されて、
全て魔力として体に取り込まれるようだ。
なのでトイレという概念がないらしい。
魔力を回復する方法は他にもあるようだが、
どうやら食事が一番効率がいいらしい。
そして美味しい。
それが一番である。
二人は寮長の料理に舌鼓を打った。
「ごちそうさまでした」
二人はまた声を揃えた。
「美味しそうに食べてくれてよかったわ。
じゃあ明日に備えてな。
明日の朝もご飯は用意しとくから、
時間になったら降りといで」
寮長が答えてくれた。
「わかりましたありがとうございます」
また二人の声が揃う。
咲耶は立ち上がる。
「よし、じゃあお風呂に入ろう!」
咲耶はえっ?と交直した緑箋を見つめると、
ぺこりと寮長に頭を下げ、
また緑箋の手を取って歩き出した。
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