第4話 魔法とは

緑箋りょくせんは一つ本を手に取った。

子供向けの魔法の本のようだ。

魔法にもさまざまな解釈があるらしいのだが、

日本で有力なのは五行思想を元に作られている体系のようだ。

五行思想は古代中国の哲学的な枠組みで、

自然界や宇宙の基本的な要素を表現するために使用されている。

五行思想において、木、火、土、金、水の五つが基本となっている。

その中で相生そうせい相剋そうせいという関係が重要。


相生はそれぞれの要素を生み出す考えて、

魔法的には強化関係と言えるだろう。


木生火(木は火を生む)。

木は燃えることによって火を生む。


火生土(火は土を生む)。

火は燃えて灰を作って土を産む。


土生金(土は金を生む)。

土は地中で金属を産む。


金生水(金は水を生む)。

金は割れたり腐食したりして水を産む。


水生木(水は木を生む)。

水は植物の成長に不可欠で木を産む。


まあ少々強引なところもある気はしないでもないが、

そういう思想だったってことだ。


逆に相剋は倒す関係になっていて、

魔法で言えば弱点属性ということになる。


木剋土(木は土を剋す)。

木は土から養分を吸う。


土剋水(土は水を剋す)。

土は水を吸収する。


水剋火(水は火を剋す。

水は火を消す。


火剋金(火は金を剋す)。

火は金属を溶かす。


金剋木(金は木を剋す)。

金は木を切り倒す。


これらの関係を五芒星のように配置して関係を表している図がある。

わかりやすい関係性になっているだろう。

その上で陰陽があり、

光と闇などの関係も語られている。

白と黒の勾玉のような模様が組み合わさっている、

陰陽のマーク、太極図を見たことがあるのでよく理解できた。


とは言え魔法の考え方も一つではないようで、

外国では四代元素という考え方が主流なようだ。

こちらは火、空気、水、土で構成されている。

まあ考え方はいろいろあるという事だ。

例えば電気や風、光や闇、なんかがどの項目に入るのかは、

考える人によって違うのかもしれない。

五行思想に入れると、

雷や風は木に含まれるらしい。

そうなると木属性の魔法はかなり強力になってしまうと思うが、

どうもそういうことでもないらしい。

雷は雷だし、

風は風になっているようだ。

まあ時代は進歩しているのはこの世界でも同じようだ。


そんなこの世界では魔法が世の全てを担っている。

魔力、世界ではマナとかチャクラとか色々な言われ方をするみたいで、

その魔力から全てが作られているようだ。

それは人間も鉱物も同じらしい。

魔法を使う際には我々の体の中にある魔力を使って、

それぞれの属性の力を借りて魔法を使うことになるようだ。

つまり魔力の高いものの方がより強大な魔法を使うことができるらしい。

どこの世界でも力が強いものが強いというのは当たり前なのだろう。


とは言えどんな人間にも魔力がある。

なぜなら魔力で構成されている肉体だからだ。

肉体というか魔力体?とでもいうのだろうか。

この世界でも肉体というらしいので安心だが。

魔力がないという存在はいないらしい。

なので簡単な魔法は誰でも練習すれば使えるようになるようだ。

もちろんその魔法の威力には差があるのだろうが、

その基本的な魔法を習得するために、

魔法学校があるということらしい。


小等部ではその基本的な魔法を習っているということらしい。

基本的な火や水の魔法、

簡単な思念での会話(要するにテレパシーだな)や、

物質を浮かす魔法(サイコキネシス)、

空を飛ぶなんてこともできるようだ。

流石に箒ではないようだが、

車輪のない自転車のようなものにまたがって飛んでいる。

外の道が舗装されていないのはそういうこともあるのかもしれない。


そう言えば起きた時には人の姿が見えていなかったが、

街には人が歩いている姿も見え始めていた。

どうも目が覚めた時は早朝だったようだ。

今は太陽が上に登っているのでお昼を過ぎた頃なのかもしれない。

私がこの世界に来て何日経っているのかわからないが、

それでも数日は経っているはずだ。

考えてみると、水も食べ物も何も取ってない。

さらにはトイレにも全く行っていないことに気がついた。

とは言え喉も渇いていないし、

お腹も空いていない。

それどころか食欲というのもあまりない気がしている。


おかしいなと思ったが、

そういう世界なのかもしれないと思ったところで、

ガチャリと音がして、扉が開いた。

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