勝又ららず/Project by 50 Days Hope friends
ーミッション遂行プログラムを起動します。
ミッション 友達を100人作る
Project by 50 Days Hope 起動…
入力された情報を再度処理します……。
mission : 50日以内に友達を100人作る
……情報の処理が完了しました。
これよりプログラムを実行します。
……。
実行および起動が完了。
ミッション遂行プログラムを開始。
幸運を祈る。
-Day1-
鳥の鳴き声、流れる川の音、揺れる木の葉が擦れる音…。
無駄なほど生える草木の中心、地が剥き出しとなった場所で僕は仰向けで目覚めた。
風の感覚も草の匂いもする。まるで現実と錯覚してしまいそうだ。
まずはこの世界について説明をせねばならぬ。
ここはヴァーチャル世界のひとつで、仮想世界に意識ごと投影(ダイブ)して遊べるもの…フルダイブ型と言えば伝わるのだろうか。
そして今起動したゲームは50日以内に1つの目標を達成する事が目的だ。
今回の目標は…「友達を100人作る」か…。ちょっとハードだなぁ。50日間で最低でも100人以上と出会わなければならない。
「ふぅ…。」
こうなると1秒でも無駄にはできないこの世界における時間は有限、50日たったら強制的にエンディングだからな。
僕は重い体を起こし、宛もなく歩き出した。
「友達を作るなら都市部に出たいな、公園辺りがベスト。」
friend list : 0 / 100
-Day3-
「「「ありがとー!おにーちゃん!」」」
「あ、あぁ…」
「すいませんねぇ、いきなりこんなこと頼んじゃって…。ありがとうね!」
…公園に行くと若い子供がワイワイ遊んでいて、それに巻き込まれて…、一日が経過した。幼稚な遊びは好きじゃないが…目標の為だと割り切って頑張った。
「こういうのも…悪くないな。」
friend list : 8 / 100
-Day10-
「やっぱり悪いわ、疲れる。」
公園のベンチに足を広げて座って一言。
ここ数日は公園巡りをしてみた。遊び盛りの子供とその親と関わることが出来ればより多くの友達を作ることが可能…、効率面で見れば圧倒的に良い。
しかし疲れる。
子供の遊び相手は肉体的負担がデカい。
「ふぅ…。」
とため息を1つ。
効率を求めるならこの道一択だ…が、そろそろ別の道を使うか。
friend list : 30 / 100
-Day25-
…波に揺られて数時間、ひとつの船から歓声が響く。
「うおぉ!大物だねぇ!」
「あら〜!こんなデカいの何年ぶりかしらぁ!」
「うぉぉ...!っとっと…」
俺が趣味でやってた釣り。
気分転換に何回かやった事がある。が、こんな大物は今回が初だ。
……。
その日の夜はこの世界で釣りをして生きている人々と飲んだ。2〜3杯くらいは飲んだかな…ふぁ……眠気が…
friend list : 48 / 100
-Day31-
「…でさぁ、その〇〇っていう上司がさぁ」
「自分がやりたくないことを押し付けてくるタイプだったり」
「そう!!そうなのよ!ほんとどうにかしてるわよね〜、自分で出来るだろってのにあーだこーだ言ってさぁ…」
会社の上司へ向けた愚痴……。
いやそんなに裏で言うなら本人に言えよ………って思ったことが何回もあったが、それが出来る社会なら今頃こんな愚痴吐いてない。
「〜もう、まったくね〜、困っちゃうよね〜!」
「困るよ…君も、僕も。」
friend list : 64 / 100
-Day34-
「……。」
「……どうだい、お味は。」
カラン、カラン……。
静かな部屋に氷の音が響く。
ここは、都市部から外れた場所、影に包まれた路地の一角にあるBARだ。
こういう店はリアルでも来たことがない。というか来る時間が無い。
「わからない。こういうの初めてで」
「お兄ちゃん初めてなのかい!よぅこんな端っこに来ようと思ったね!」
「ちょうどこの辺に用があって……偶然ってやつです」
「偶然の出会いってやつだァ、ゆっくりしていきな。なんだって聞くし、なんだって出せるぜ、ははは!」
「……ありがとう」
カラン、カラン……。
静かな部屋に氷の音が響いた。
friend list : 75 / 100
-Day40-
「また来ちゃいました、マスター」
「よぉ、お兄ちゃん。いつも端から端まで忙しそうだねぇ!ははは!」
「ま、まぁ……ははは…」
カラン……ガヤガヤ……。
騒がしい部屋に氷の音がもみ消された。
2度目のご来店ってヤツだ。今日もBARにやってきた。
日々の苦痛、ストレス、苦悩、エトセトラ……
ここに来ると何も考えずに過ごせてすごく楽だった。
「……前と同じの、お願いします」
「気に入ったか!お兄ちゃんよ、オーケイ!とびきりうみゃあもん用意するぜ!」
……。
「……今日人多いですね」
「飲みに来る人、相談をする人、恋愛をする人……。ここは罪人以外はウェルカムさ」
「憩いの場……ってやつですか」
ガヤガヤ……ガヤガヤ…………。
今日は騒がしい日になりそうだ。
friend list : 83 / 100
-Day46-
……。
カラン……カラン……。
静かな部屋に氷の音が響く。
「マスター、いつもの」
「あいよ!」
3度目のご来店ってやつ。
いや気に入ったんですよ。
でもそれとは別に聞き込みしようかなって。
……。
「……え?お祭り?」
「明後日くらいにね、近くの神社でお祭りがあるのよ」
「そうなんですか……」
とても気になっている。
友達の人数も増やせるかもしれない。
ラストスパートってやつだ。
friend list : 89 / 100
-Day48-
「よぉ!らっしゃい!」
「……りんご飴、2本貰っていいですか?」
「あいよ!300円だぜ!」
ワイワイガヤガヤ。
色んな屋台で売買が行われ、大繁盛している。
「この街にこんなにも人が……。」
りんご飴の屋台でお買い物を済ませた僕は、騒がしくない場所まで移動する。
「マスター、例のブツです」
「りんご飴か!The屋台って感じだね」
「そうですか、ははは」
そう言って歯型を付けるほど大胆に口を開けて齧る。
「美味しい……」
「まさか初りんご飴かい?」
「はい、なかなか屋台なんて寄らないもので」
そんな話をしていると、遠くで大きな音がした。
ヒュー、ドカン…パラパラパラ……。
花火だ。
「こんな日も、良いな……」
「ん?お兄ちゃんなんか言ったか?」
「いや、なんでもないです……」
friend list : 102 / 100
-Day50-
50日経過……ゲームを終了します。
脳内に機械音声が響く。
「もう50日……」
友達の数は102人。目標は無事達成しゲームクリアだ。
改めてこの数日を振り返る。
色んな人と関わって……、話して……、楽しんで……友達になって。
「恵まれていたんだな、僕は……」
この世界から戻ったらいつもの日常だ。
こんな恵まれている社会ではない。
「ありがとう……みんな。」
そう言い残して現実へと足を進める。
そうして生まれたのが僕なのである。
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