第3話「クリスマスパーティー」ー5
「おいっ! やめろよっ! いやがっているだろう?」
聞き慣れた愛しい声が聴こえてきた。
意表を突かれた綺一の腕の力が緩んだ隙を突いて、私は、するりと、綺一の両腕の間を潜り抜け、一目散に愛しい声のする方へと走って抱き着いた。
(あれ? いつもと感触違うけど……黒須だよね?)
冷静を取り戻した私は、自分が抱きついた殿方の姿をまじまじと見て仰天した。
「えっ? ショッピングモールにいたサンタのおじさん?」
「自分の彼氏のことを忘れるなんて、ひどい彼女だよねえ」
そう言って、黒須は赤のナイトキャップと、綿あめみたいなつけ髭を外した。
「えっ? えっ? 黒須? どういうことなの?」
クリスマスイブの日の特別な仕事について、何度訊いても黒須は教えてくれなかった。
「説明は後! とりあえず、ここから逃げよう!」
私たちの周りには、いつの間にか人集りができていた。すごい形相をした綺一がこちらをギロリと睨みつけている。黒須は、私の手をとって、一目散に逃げた。街中のイルミネーションが、流星群みたいに次々と光の軌跡を描いて、私たちの上から降り注いでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます