第2話「三田 黒須」ー1

三田サンタくん、準備はできたかい?」


「はい……」


白いトリミングが施された赤いコスチュームに、赤いナイトキャップ、綿あめみたいな白いつけ髭をつけた俺を見た上司の久根人くねひとは、笑いを堪えながら大絶賛した。


「よく似合ってるじゃないか! 三田サンタくん!」


(いや……俺、三田サンタじゃなくて、三田みたなんだけどね……これ、パワハラで訴えてもいいのかな?)


 俺の名前は、「三田みた黒須くろす」。非常に遺憾なことに、本名だ。多くの方々の想像に難くないことだと思うが、俺は、このふざけた名前のせいで、幼少期から悪ガキどもにからかわれ、成人を過ぎた今となっても、このように上司に弄ばれている。ガキの頃、俺は、なぜ、こんな名前をつけたのか? と両親を問い質したことがある。すると、両親は、

「あ……あれだよ……父さん、若い頃、“モトクロス” に夢中でな。母さんとは “モトクロス“ を通じて出逢ったんだよ……、な? 母さん?」


「ええ……そうよ…… “黒酢” は健康にいいっていう話で意気投合したのよね?」


 俺の名前が、親の悪ノリで命名されたことが判明した瞬間だった。

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