第2話「三田 黒須」ー2

 そして、俺の勤務先は、今年で創業100周年を迎える老舗玩具メーカーの「三田サンタ玩具」だ。三流大卒の俺は、就活でなかなか内定が取れず、就職課の職員に相談したところ、


「あっ! 君! この会社なら、君の名前を存分にアピールすることができるんじゃないかしら?」


今時珍しい、紫色の髪色をしたオバハンの冗談とも本気とも取れない提案に乗って面接を受けたところ、面接官一同、抱腹絶倒で、即内定をゲットしたのだ。


ちなみに、俺の正式な所属部署は “商品企画部“ だ。ここ数年、外資系の大手玩具メーカーの日本進出により経営が傾いている「三田玩具」は一昨年から、クリスマス期間限定で「サンタクロース部」を立ち上げた。サンタクロースのコスチュームを身に纏い、自社商品を、孤児院を中心に子どもたちに配る、というのが仕事内容だ。特にクリスマスイブの夜は忙しく、昼間孤児院を訪問し、夜は、ショッピングモールなどでも子どもたちにプレゼントを配るため、イベントスペースの後片付けが終了するのは深夜だ。


(かな、ひとり寂しく、クリスマスイブの夜を過ごすんだろうなあ……)


 去年のクリスマスイブ、ひとりでやけ食いをして、一晩で3キロ体重が増えたという話を彼女から聞かされた俺は、ズキズキと胸が痛んだ。

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