第1話「戸中井 かな」ー2

「かなさん、今日、何件目ですか?」


 受話器を置くと、後輩社員のゆきが話し掛けてきた。


「今ので7件目かな。もう、うんざりなんだけど……」


「ですよねえ。今日、クリスマスイブですし……どうしても、お客様 “トナカイ” “サンタ”には敏感になりますよねえ……」


 雪が、憐れむような目で私をみつめた。


「仕方ないよねえ。私が、逆の立場でも、きっと『は?』ってなるもの」


「ところで、かなさん、今日は仕事の後、彼氏さんと予定アリですか?」


「残念ながら予定ナシなんだあ。この時期、彼、仕事がマックスに忙しくて……」


「そうなんですね。それじゃあ、今日、クリスマスパーティー、一緒に行きません? 女の子の方の人数揃わなくて困ってるんですよ」


「え? それって、合コンなんじゃ?」


「違いますよお。クリスマスパーティーですよ。クリスマスイブに予定ナシなんて寂しいですよー。楽しみましょー!」


 確かに、雪の言う通りだなと思った。何も予定がない私は、きっと、ショッピングモールに立ち寄り、イチャイチャする恋人たちに舌打ちをし、見栄を張って、7号サイズのホールケーキを買い、さらに白ひげの肥満体型のおじさん人形が立っている店でパーティーバーレルを買って帰り、クリスマス特番で、お台場あたりでインタビューを受けるラブラブなカップルをよそ目にチキンを某海賊王のように豪快に齧り付くに違いない。事実、昨年は、それで3キロ太ったのだ。二度、同じ過ちを犯すわけにはいかない。


「それもそうだよね。“クリスマスパーティー” なら、浮気じゃないもんねっ! 私も参加しちゃおうかなっ!」


「そうですよー。パーッと楽しみましょう!」


 かくして、私は、クリスマスパーティーへと繰り出すこととなった。

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