第1話「戸中井 かな」ー1

「お電話ありがとうございます。“トナカイ宅急便” 受付の“戸中井となかい“でございます!」


「は? トナカイ? クリスマスサービスかなんかなの? お宅の会社は “赤鼻のトナカイさん“ がプレゼント届けてくれるの?」


「いえ……そういうことではなく、私の苗字が “戸中井となかい” でして……」


(これだから、この時期、電話取るのイヤなのよっ!)


 私の名前は、「戸中井となかい かな」。残念ながら、本名だ。この名前のせいで、私は、幼少期から悪ガキたちから散々からかわれてきた。そして、私の勤務先は「トナカイ宅急便」。短大新卒の就活でなかなか内定を取ることができず、就職課の職員に相談したところ、


「あっ! この会社なら、あなた、名前だけで内定取れるかもよ?」

と、七三分けのバーコードのオッさんに言われ、やけっぱちで面接を受けたら、面接官一同大ウケで、即内定が決まったのだ。

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