カレーライス
平成生まれ昭和人間
カレーライス
ずっと続くと思っていた日常が歩みを止めた時、私は息をする重たさを感じた。
祖母は齢80手前、人生を謳歌し家族に恵まれている。私は大学生、日常に明るみを求め暗闇に足を入れている。
祖母は私の対極にある人だ。彼女は明るく日本人の女性を象徴するような女性。私は昭和男気質とでも記しておこう。私はそんな祖母を心から敬愛しており、祖母と過ごす時間が何よりも大切な時間であった。
私はよく祖母と食事を共にした。彼女はお喋りで食事の際であろうと、日常で私が話す量を凌駕するかの如く会話をする。そんなお喋りな彼女を鬱陶しく思ったことがないと言ったらそれは嘘だ。年齢が60も離れている我々にとって、話す内容が異なるのは何もおかしいことではない。しかし、私は彼女と話す事がとても好きだった。
ある時、私がカレーライスを食べていた際に彼女が軽快に階段を登り私の前に座った。今日は何の話をするのだろう。本日の話題は辛いものは身体に良くないという豆知識からだ。あまりにも突然と思うかもしれないが、彼女は突然テレビや形態で知り得た情報を話すことがあるのだ。私の身体を気遣い言ってくれている様に可愛らしさを覚えながら、口に広がる辛さに舌を痺れさせ、貴方は笑った。私はさらに辛さを足す、祖母は半分呆れたような様子で笑っている。この顔が私は大好きだ。
小説を書いてみようと思う。彼女の頬は緩まなかった。彼女は私がしてみたいと言った事に対して笑顔を見せたことはない。仮にそれが不可能に近いものだとしても、いつでも応援してくれた。しかし、私の国語の成績が悪い事を言うとそうだったと言い、いつもの様に笑顔を見せた。それでも私に、是非やってみるといいと鼓舞してくれた。彼女の応援の中には、私が生きる糧としているものがいくつかある。その瞬間は暗闇から足が抜け、地上の温かみをすることができた。
カレーライスを食べ終え、皿を洗う。
私は雨を拭き、透き通った空を見上げた。
暗闇で目を覚ます。
貴方は私が大学生になる前に死んだ。
カレーライス 平成生まれ昭和人間 @haru611
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