二十四話

「い、今じゃなきゃダメかな?トイレに行きたいんだけど」

「駄目。もう騙されないよ私」

「……俺豆丘さん騙したことあったっけ?」

「ビルの上での出来事忘れちゃった?」

「……あぁ、なるほど」刃は苦笑いを作り、ため息をつく。


俺は真っ暗の視界の中、顔を覆っている腕に指を差し、「よし、分かった。分かったからせめてこの手だけは外してくれない?」と言った。

「目が見えたら刃君超能力チカラ使って逃げるから駄目」

……まぁ前回あんな感じだったしこれは仕方ないか。

「えっと、どんな契約したかだっけ? 」

「うん、そしてなんで契約を受けたかって、いうのも聴きたいかな」

「……契約もなにも、人手が欲しいからって言われて手伝ってるだけだよ。あの人羽振りも良いしね」

「……本当にそれだけ? 」訝しげな声音で豆丘さんは念を押してくる。

「実際は……もう一つ、かな」

「もう一つ?」

俺は大きく深呼吸をし、「笑わないでくれる?」

「笑わないよ」

「俺実は、少し憧れがあってさ。こういった超能力チカラを使って暗躍する組織みたいなのに。

漫画とかでこういうの格好いいとかなってたんだ……。

もう高校生になってるのに中学生みたいで幼稚だけど」

「……その憧れとかに関しては良く分かんないけど、私のせいでとか、無理矢理とかではないんだね?」

「……勿論」

まぁ四分の一位は俺の意思だし、嘘はついてないはず。

その後静寂が数瞬―――眼前を覆っていた手が離される。

「……とりあえず分かった」

豆丘さんは立ち上がると、食べ終わった皿を台所へと持ち出す。そして「今日は材料ありがとね」と皿に水をかけながらそう言った。

俺も起き上がり、「美味いカレー食べること出来たし気にしないで。俺も片付け手伝うよ」台所へと足を運んだ。

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