二十二話
俺が目を覚ますとそこはベッドの上だった。
白いカーテンで仕切られており、視線の先にある天井も白く何処かの病院なのだろうか?
「……ん? 」
見慣れない場所にキョロキョロとしながら上体を起こす。
気を失うまで前腕部にあった傷も、足首の痛みも、何とも言えない倦怠感も無くなっており不思議に思った俺は腕や足首を撫でる。
完全に痛みは引いていた。
「やぁ、起きた? 」
突然カーテン越しから声が耳に届く。
少し高めのその声は女性の声だ。
「は、はい」
驚いたせいで少し声が上擦りながら俺は返答する。
カーテンが開かれ現れたのは、長い髪を1つの三つ編みにして、肩から垂らしている白衣を着た美少女だった。
俺と同じぐらいの歳だろうか。
見た目も手伝って医者というよりコスプレにしか見えない……、とは助けてもらったのもあり、言えない。
「……すみません助かりました」
「いやいや気にしなくていいよ」
「俺確か怪我してたような気がするんですが……」
「ん? あぁ私
なるほど、
てことは普通の病院とかじゃないな。
「……あのもしかしてここ和子池研究所だったりします? 」
「お、当たりー。前回君がここに来たとき私いなかったからね。紹介省かれちゃったっぽい」彼女は少し笑いながらこほんと咳払いをして続ける。
「私の名前は
「俺は真九呑地 刃です。改めて、日流千さんよろしくお願いします」
俺はお辞儀をする。
「よろしく。……それはそうと真九呑地君。もう朝4時だけど学校大丈夫? 」日流千さんは壁掛けの時計に指を指しながらそう言う。
「……えっ? 」日流千さんの指した方へ視線を向けると、それは確かに4時を指していた。
「あっ、急いで帰ります! 」慌ててベッドから降りると、その部屋の扉が開く。
先程のスーツの男だった。
「家までお送りします」
そう言ってその男と一緒に幾度か壁のような扉を通り抜け、エレベーターに乗り外へ出るとまた黒色のワンボックスカーに乗った。
結局そのまま睡眠をとらずに学校を終わらせた俺は、足取り重く豆丘さんの家へと向かっていた。
原因は別に睡眠不足だからとか、戦闘後だからだとか、という理由ではない。豆丘さんが昨日が俺にした質問の答えがまだ固まっていないからだ。
数回向かうのを止めようか悩んだが、結局行って答えを出さなければ、その間豆丘さんとギスギスするのは間違いない。
……せっかくの数少ない友達とギスギスしたくはないのだ。
(とは言っても契約もなにも俺自身がどんな契約なのか分かってないからなぁ。 んーどうしようかな )
となんとなしに、右手にぶら下げた近くのスーパーで見繕ったカレーの材料たちを慣れない手つきで詰めたビニール袋を見る。
(にしても綺麗に詰めなかったせいでアンバランスだな。……母さんとか綺麗に詰めてたな、パズルゲー絶対上手いわ。
そういや、俺なんか今日寝てない割に元気だな。もしかして気絶していた時間って睡眠時間に含まれるのかな? あーそういや風呂で寝落ちするのって実際気絶みたいなもんだってなんかで見たような―――)
等と無駄な思考をしている間に、 気がつくとドアの前だった。
一つ深呼吸をして空いてる左手で、人差し指を立てインターホンへと近づける。が、インターホン押す勇気が出ない。数秒止まり、そしてそのまま(や、やっぱ今日は止めとこう)と手を戻そうとした瞬間、ドアが独りでに開いた。
そうしてひとつの影がすっと眼前に現れる。「やっほー」何時も通りの笑顔を浮かべた豆丘さんが此方に手招きする。
「え、な、なんで? 」特に変わった様子の無い豆丘さんと突如空いた扉で驚いた俺はたどたどしく言葉を紡ぐ。
「なんでってここ私しか住んでないし来客なんて、刃君しかいないでしょ? 」
そして俺の右手に下がっているビニール袋を一瞥し「あー!材料買ってきてくれたんだ 」俺の手からビニール袋を取ると「ありがとう。刃君も入りなよ」と中へ入っていった。
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