二十話
(え……? なんだ……あれ? )
ぞわりと背筋が冷える。
角から現れ街灯の灯りに浮かび上がったそれは
黒色の全身タイツを顔に凹凸のないマネキンが着ているようなそれは顔? を此方に向け、首をかしげる。
(お、おいおい! マジモンの幽霊とかじゃねえよな?! )嫌な汗が止まらない。
逃げ出したくて仕方がなかった。
知らず知らずの内に後退りをしていた俺はなんとか踏み留まる。
(こいつが目標……か? )
じっとそれを見ていると、唐突にそれは此方に向かって走り出した。
(っ……! 来やがった?! )
近づくにつれそれが何かを握っていることに気がつく。
それは本体と同じ色をした、細長い長方形の箱のような物に見える。
(なんだ? )
瞬間、闇はその箱を握った手を独特のリズムで振るう。
俺は理解した。
(バタフライナイフだ! )
察すると同時に間合いに入った闇はバタフライナイフを持った右腕を突き出す。
狙いは胸元だろう。その鋭い突きは切っ先は俺に当たる寸前で固まる。
俺は直ぐ様もう2つの
「……危なかったな」
冷や汗を拭い、改めてその闇を見る。
足をバタバタをしたりどうにか抜け出そうとしているが、腕力は人並みのようで俺の拘束からは抜け出せそうもなかった。
「いや凄いなぁ。僕の
弾かれたようにそちらを見る。
そこにはフード付きパーカーを着た、拍手している優しそうな糸目の男が立っていた。
「……あんたが
「そうだよ。でも僕の
「……だとしても言う必要はないな」
「なるほど確かに。それもそうだ」そいつはニコニコと笑いおどけたように両手を上げる。
「……両手を此方に出せ」俺は胸ポケットから手錠を取りだす。
男はそのまま両手を差し出した。
(……やけに聞き分けの良い奴だな)
そうして手錠を掛けようとした時、男は「そう言えばさ、君の手首は今
「……は? 何を言って―――」
俺がそちらを見ると人型の闇はなく俺の手首だけがそこには浮いていた。
カチャカチャと先程の男の方から音が鳴る。
慌てて視線を男に戻すとバタフライナイフを展開していた。
「よそ見は駄目じゃない? 」男は袈裟懸けに切りつける。
「っ?! 」俺はそれを避けるために直ぐ様
が、着地した瞬間足首に激痛が走った。
「いっ……?! 」今度は視線を反らさずに、腰を降ろし右手でそっと患部に触れる。
どくどくと何かで切りつけられたように出血していた。
「あらら惜しい。もう少しでアキレス腱を切れたのに」
男の持つナイフに血はついていない。
(この傷は? )
痛みを堪えながら男をじっと観察する。
すると奴の影がうぞうぞと蠢いているのに気がついた。
「解せない、って顔してるね」
音もなくぬるりと奴の影から先程の闇が現れる。
その闇は男と背を合わせナイフを構えた。
「さぁ君は、
闇の持つナイフには血が付いていた。
(……なるほど、あの影は男の影から自由に出たり入ったりできるのか)
俺も
その時、男は体勢を低くしながら突っ込んできた。
間合いに入った男は俺の肩へとナイフを振るう。
そのナイフは俺に触れる寸前で
(あぶねえ……! )
そうして男の頬へもう一つの、
瞬間、ナイフを握っていた右手が開き左手へとナイフが渡るのが見えた。
反射的に
左手でのナイフでの突き。
ギリギリで避けたそれは俺の上着に穴を開けた。
(は、反応遅れてたら危なかった)
その男の後ろにいた人影がナイフを振り腕を押さえていた
「良い反応だ」押さえられていた右腕をくるくると回しながら、男はぷっと口から血の混じった唾を吐く。
先程殴ったのはノーダメージではなかったようだ。
(……攻撃で消された
となれば、攻撃や防御に使えるのは1つだけ。
流石に脱出用の
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