十六話

「……何がです? 」

「お前の超能力チカラだよ。透明だったりそうじゃなかったりしただろ? 」

「……それ説明したら睨むの止めてもらって良いですか? 」

「とっとと話しやがれ。……ここは遮蔽物なんてないから俺の炎は避けられねえぞ? 」陽斗はそう言うと立ち上がり右手から炎を生じさせる。

 刃はそれを見るや、立ち上がり、直ぐ様魔法の手マジックハンドを作り出そうとし―――止めた。

 司が腕組をして出入り口に立っていたからだ。

「仲良くしろって俺言ったと思うんだが」

「こいつが超能力チカラについて話そうとしないのが悪い」右手の火を消し、陽斗は刃を指差す。

「話す代わりに睨みつけるの止めて下さいって頼んだだけですよ、俺は」

「……とりあえず陽斗脅すのはやめろ。あと刃、多分睨みつけてた訳じゃない。陽斗は元々目つき悪いだけだ」

 司がそう言うと、陽斗は舌打ちをし椅子にどかりと座る。

「……だがこれから共同でやる仕事とかもあるかもしれない。説明してもらえるか? 刃」

「……分かりました」

 刃は少し不服そうにしながら3つの魔法の手マジックハンドを発現させた。



「――と、まぁこんな感じです」

 俺は自分の超能力チカラについて知っている事を話す。

「へっ、しょぼい超能力チカラだな」と陽斗という赤髪の男は半笑いを浮かべながら言う。

「一回やられてる陽斗がそれ言ったって負け惜しみだぞ」と司さん。

 そのままの体勢でカチンと固まる陽斗。

 なんとなくこの部屋のパワーバランスが分かってきた気がした。

「……出来たらお二人のも見てみたいんですが良いですか? 」

「そうだな。陽斗見せてやれ」 

「……仕方ねえな」そう言い陽斗は立ち上がると両手を燃やす。

「俺は双炎熱ツインヒート。両手から火や熱を発することが出来て、出した火は消すのも絶やさないのもある程度自由」めんどくさそうにそう言って、司さんへ指を指す。

「次は司、お前だぞ? 」

「あぁ、勿論だ」立ち上がり、デスクへと手を当てる。

 すると触れている腕の表面が鈍色に変化し、肘辺りまででぴたりと止まった。

「俺は吸収アブゾーブだ。

 触れたものの特性なんかを体にコピーできる。

 今回はこの金属の強度をコピーした」と変化していない片手で変化した腕をこつこつと叩く。

「……あの時腕が伸びていたのは? 」

 俺を捕らえた時に腕が伸びていた事について聞く。

「あぁ、あれはゴムだ。

 ゴムの伸びて縮む特性をコピーした」

「成る程。ありがとうございます」おれはそう答えながら(司さんの汎用性高いな……。陽斗って奴のは殺意高いし……。

 この後この人たちと対立することになったら対策しないとまずそうだ)等と考えていると「……なに考えてんだ? 」陽斗は頬杖をつきながら此方を睨み――、いや不審そうに見てきた。

(まずい、見抜かれたか……? )

「い、いや、お二人の超能力チカラは強いなと思いまして」と考えていた半分本当の事を言うと、「ま、まぁな。分かってるじゃねえか」陽斗はぴくりと眉を動かし唇が釣り上がる。

(……あれもしかして? )

「特に陽斗さんの方は戦闘にもってこいですよね! いやー凄いなぁ」等と太鼓を持ってみると

「……いやいやそれほどでもあるけどよ。

 お前の魔法の手マジックハンドも割と良い線行ってるぜ? 」ニヤニヤと笑いながらしきりに頷いていた。

(さっきと言ってる事違うじゃねえか)

 そんな陽斗の様子を見てか苦笑いを浮かべながら、司さんは「少し二人で待っててくれ。俺が戻ったら刃を家に送ろう」そう言いまた部屋から出ていった。



「茂様、何故あんなやり方を? 」この研究所唯一のソファーのある和子池の私室にて、司は書類をまとめながら和子池へと聞く。

「なにがじゃ? 」ソファーに座りタブレットを操作しながら和子池は声だけあげる。

「刃の事です。引き入れたいのであれば、普通に勧誘すれば良かったのでは? 」

「どうもあやつ変に冷静だったからの。焦らせてみたかっただけじゃ」和子池はタブレットをスワイプし、くすくすと笑い出す。

「陽斗が死んだといったときの表情……笑いが止まらんわい」

「……あまり性格が良い趣味とは言えませんね 」

「そう言うな、たまには良かろうて。そうそう、その段ボール渡しといてくれぃ 」人差し指を段ボールへと向け和子池はタブレットをしまう。

「承知しました。では失礼します 」司は礼をし段ボールを担いだまま白色の扉から出ていった。


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