十二話
「すみませんでした」
額をフローリングに擦りつけ、刃は自室に戻ってきた木葉に開口一番謝罪の言葉を述べた。
「い、幾らなんでも流石に恥ずかしいよあれは……」刃が渡した服――多少サイズが大きい――に身を包みシャワーを浴びたからか、それとも先程の事を思い出したのかうっすらと頬を染めながら、木葉は拗ねたように視線を反らす。
「……返す言葉もない」
「もう、次は駄目だからね? 刃君にとってもさっきのは不測の事態だったみたいだけど」
「言い訳に聞こえるだろうけど……、あの状況を脱するにはあれしか思いつかなかったんだ」
木葉が部屋に入る前から、ぴたりと姿勢を変えずに刃はそう返す。
「なら仕方ないよ。……あ、もう良いよ。ほら頭上げて」
「いや俺の気が済まないから……」
頑なにフローリングに伏してる刃に困ったように、木葉は苦笑いを浮かべながら頬をかく。
そして一つ息を吐き「……あーお風呂入ったし何か冷たいものが食べたいなー」そう刃に助け船を出した。
そうでもしないと刃は頭を上げないと思ったのだろう。
それを聞いた刃は「すぐ買ってきます! 」と立ち上がり財布を取るとバタバタと階段を降りていきダッシュで最寄りのコンビニまで走っていく。
その様子を木葉は2階の窓から眺めていた。
その後特に二人の間に蟠りもなく休日は過ぎていった。
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