第77話 神様配信をしよう(その2)
「ここは私にお任せいただけないでしょうか?」
「……レラ?」
俺たちの前に立った付喪神レラ。
その全身から巨大な霊力が立ち上る。
彼女は地脈のエネルギーを自身の力に変換することが出来るらしい。
「コン様、少々試してみたいことがあり……倉稲洞穴の地脈をお借りします」
「う、うむ。それは構わぬが……」
コンも戸惑い気味だ。
ここはコンが付喪神を務める倉稲ダンジョン。
いわばコンの”聖域”なので、レラはこのダンジョンにとってはお客さんだ。
レラの持つAsahikawa 7thの青スキル(エリア効果)や赤スキル(施設建築)はもちろん使えない。
緑スキル(ダンジョン本体効果)の一部、効果範囲が個人の物が使えるかと言った所だ。
この辺りの事は萌香が詳しいのだが、あいにく彼女はいまだ石化しており、理沙礼奈姉妹が再起動プロセスを実行しているがまだ時間が掛かるだろう。
「まずは、”演舞”を」
レラはそういうと、腰に差した鞘から刀を抜く。
刃渡り50㎝ほどの、大きく反った刀。
表面には複雑な紋様が描かれている。
「おお! わらわと違って、レラは戦えるのじゃな!」
「そうなのか」
コンはまだ付喪神として幼いこともあるが、アシストが専門である。
モンスターの攻撃でダメージを受けることはまずないが、攻撃術などはほとんど使えない。
「……参ります」
だんっ
レラは地面を蹴ると、小鬼の群れへと飛び込んだ。
*** ***
「炎術壱式!!」
ゴオッ!
レラの背後から飛び掛からんとしていたすねこすりに、俺の炎術が直撃する。
「!! 的確な支援、痛み入ります!」
ざんっ!
レラの曲刀が一閃、すねこすりを両断する。
「まだまだ、こんなものではありません!」
金色の覇気を纏う鵺に向けて、地面を蹴るレラ。
「おお……!」
「レラちゃん、かっこいい!」
鮮やかなレラの戦い方に、感嘆の声を上げる俺と理沙。
「レラち、なんかあれだね。大自然の……」
「す、ストップ!」
余計な一言を発しようとした礼奈の口を慌てて塞ぐ。
これはウチのチャンネルの公式配信である。
著作権に配慮が必要だ。
>礼奈ちwwww
>アレの第一作の発売がすでに30年前だと……! 5年ぐらい前じゃないのか!?
>おっさん乙
>だからなんで礼奈ちは知ってんだよ!
「あ、あたしだって山高市のゲーセンでプレイしたことあるし! 最新ゲームでしょ!」
礼奈のトレンド進化は、ゲーム部門には及んでいないらしい。
早速コメント欄でいじられている。
>礼奈ちぶれねぇ
>山高市の時空が歪んでいる件
>ワイの地元馬鹿にすんな!
>岐阜県民発見!
>そんな事より、レラたんのバトル見ようぜ!
>確かに。めったに見られるもんじゃないしな。
>付喪神なのに、レラはここまで戦えるのか!
「……ふむ」
「コン、どうした?」
盛り上がるコメント欄とは裏腹に、腕を組んだコンは難しい表情を浮かべている。
「はああああああっ!」
眼前では、何か奥義っぽい技を発動させたレラが、曲刀に蒼い霊気を纏わせ、鵺を打ち倒した。
「おお、すげぇ!」
無邪気に手を叩く俺だが……。
「力が、抑えられておるのか?」
「え?」
コンの口から発せられたのは、思いもよらぬ言葉だった。
「狼神レラと言えば、わらわたち稲荷の最上級である玉藻と並ぶ最上格の神。
しかも現界して永い時を経ていることを考えれば、この程度であるはずがない」
「……気付かれましたか」
魔物を全滅させ、俺たちの元に戻ってくるレラ。
首筋にはびっしりと汗をかいている。
「一年ほど前から、どうしても全力が出せなくなったのです。
それに合わせて、旭川洞穴の地脈も……」
レラの表情が曇る。
「ほうぼう手を尽くしてみたのですが、原因が分からず……異なる洞穴に来ればもしやとも思ったのですが」
「ふむふむ……そうじゃ!」
顎に手を当て、何かを考えていたコンがポンと手を叩く。
「コン!? まさかそれは……!」
しゅるりと制服の胸元を緩め、首飾りを取り出すコン。
首飾りについているのは、4つの勾玉。
コンと初めて出会った日、ゴールデンスライムを召喚したアレである。
「にはは、少々荒療治じゃが……こいつを試してみるとしよう」
そういうとコンは、にやりと笑みを浮かべたのだった。
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