相続したGランクダンジョンがSSSランクに進化した ～【収穫10倍】潜るたびにチート効果ゲットでうっかり世界の覇権を取ってしまう【経験値10倍】～

第42話 協会案件の後、女子会

「てや～っ！！」

　鵺（ぬえ）の懐に入り込んだ理沙が、牽制の蹴りを放つ。

　どがっ

　グギャアアアオンッ！？

　靴底に仕込まれた足甲がヒヒの顎を捉え、大きくのけぞる鵺。

「礼奈！　ヤツの足を止めるぞ。

　座標右七三に3点射撃！」

「ほーい！

　遠射参式！！」

　パンパンパンッ！

　間髪入れずに礼奈の銃から放たれる、魔力の弾丸。

　遠射スキルは射程を重視しているから、弾速は少し遅い。

「統二、礼奈、何をしている？　そこには何も……」

　萌香の言う通り、礼奈が射撃した先にモンスターはいない。

「まあ見てな」

　だんっ

　これ以上理沙の打撃をくらってはと、その場から飛びのく鵺。

　バシュッ！

　次の瞬間、その両足を正確に礼奈の銃弾が射貫いた。

　ギャオオオオオンッ！？

「な、動きを読んだというのか！？」

　驚きの声を上げる萌香。

「いまだ！」

　鵺が地面に落ちたタイミングを見計らい、術を発動させる。

「氷術参式！！」

　バキバキッ！

　俺の術が、蛇型をした鵺の尻尾を凍り付かせる。

　鵺は、あそこから電撃を見舞ってくる。

　これで、遠隔攻撃手段を封じることが出来た。

「よし、萌香！　トドメだ！！

　アピール、アピール！！」

　ダンジョン協会案件だからな！

　主役である萌香を目立たせてやる必要があるのだ。

「う、うおおおおおおっ！」

　大剣を上段に構える萌香。

　ちらりとおへそがカメラに映る。

「く、くまさんフラッシュ（やけくそ）！！」

　どごーん！！

　闘気を込めた萌香の剣技が炸裂し、ボスモンスターである鵺は真っ二つになった。

「よし、理沙、礼奈、仕上げだ！」

　事前に美里さんが考えてくれていたプランに従い、二人に声を掛ける。

「了解ですっ！」

「うぅ、ちょっとハズイんだけど」

「え、えっ？」

　理沙と礼奈が萌香に駆け寄り、その小さな体を抱き上げる。

「わたしたち！」

「大勝利だし！」

「え、え……が、がお～？」

　流されるままにポーズをとる萌香。

　＞か、かわいいいいいいいいっ！！

　＞これがダンジョン協会の次世代トップエース！

　＞俺、推すわ！

　＞相変わらずトージの視野スキルやべぇな

　＞もしかして、動きを予測した？

「おう、特に鵺みたいな高レベルモンスターは、行動する際に地脈の流れが乱れるからな。乱れの向きを観察すればこんなもんよ」

　＞うせやろ……

　＞チートすぎるww

　＞腐っても穴守家の人間か

　＞トージパパ、ちょっとあこがれる！

「にはは！　わらわの主人なのじゃから当然じゃ！」

　ぴょんっと俺の肩に飛び乗ってくるコン。

　＞お、コンちゃんタワー来た！

「これにて、だんじょん成敗～～♪」

　コンのポーズと共に、配信は終了するのだった。

　＊＊＊　　＊＊＊

「ぬ、ぬぅ……もうやらないぞ」

　しゅうううう

　アタマから湯気を出しながら、テーブルに突っ伏している萌香。

「あ、あはは……お疲れ様ですっ！」

　ここは倉稲探索者ビジターセンターの15階。

　村全体を見渡せる最上階に、特産品である梨を使ったコンセプトカフェがオープンしていた。

「にはは～♪　倉稲の梨は絶品じゃぞ～♪

　わらわのオススメはこんぽーとじゃ！」

　しゃ～っ

　なぜか巫女服にローラースケートを履き、配膳係をしているコン。

　トージいわく、”社会勉強”らしい。

　トージ本人は、笠間夫妻と厨房係だ。

「うわぁ！　コンちゃんかわいいぃぃ～！」

「神様が給仕してくれるカフェとか、初めてだよ！」

「にはは、おねーさんたち来店ありがとなのじゃ！」

「ねえねぇ、写真撮っていいかな？」

「もちろんじゃ！　にはっ☆」

　ぱしゃ

　東京からはるばるやってきたというお客さんたちと、自撮りに納まるコン。

　現在は週2日の営業だが、3か月先まで予約が埋まっている盛況ぶりだ。

「にはは！　理沙も萌香も大儀じゃったな！」

　理沙たちが座っているテーブルにも、コンが注文を運んできてくれた。

　生クリームがたっぷり乗った梨のコンポートに、暖かい梨紅茶だ。

「ふふっ、コンちゃんありがとう！」

「うおおぉ、可愛いが過ぎるぞ！」

　ぎゅっ

「へへ～」

　思わずコンを抱きしめた萌香に、にへらっとした笑みを返すコン。

「い、癒される！」

「して、二人は何を話していたのじゃ？

　いわゆる女子とーくというやつじゃろう？」

　お姉さん二人が何を話しているのか、目をキラキラさせて興味津々のコン。

「あ～、それはだな……」

「モエさんって、トージさんが好き好きでしょ？」

「ぶふぉおっ！？」

　ストレートな理沙の物言いに、紅茶を吹き出す萌香。

「わたしも勿論大好きなんだけどっ！」

「ふむふむ」

「トージさんはあの通り、超絶激ニブなわけですよ」

「この世のものとは思えぬからの！」

　先日の恋愛（？）トークを思い出し、深く得心するコン。

「わたしとモエさんはライバルの前に戦友……とゆー事で情報交換していたのですっ！」

「ワ、ワタシとしても養成校時代しか知らないからな……統二のことをより深く知りたくて♡」

「ふむ～、わらわも気になるのじゃっ！」

　時刻は15時過ぎ……そろそろ閉店の時間である。

　コンは自分用のコンポートを厨房から取ってくると、理沙の隣に座るのだった。