第27話 ビジターセンター始動

「改めてすげぇな……」


「ふむ、なかなかの出来栄えじゃな!

 大は小を兼ねる!」


「いや、兼ねすぎだろ」


 倉稲村に出現した巨大イ〇ンモール……もとい「Kon-Mart(コンマート)」までやってきた俺たち。


「えぇ、なにこれ……?」


「は、はえ~」


 見上げるほど巨大な建物に、理沙たちも笑うしかない。


「倉稲村探索者びじたーせんたーとやらに、これくらいで足りるかの?」


「足りるも何も……」


 30個くらい設置できそうである。


「と、とりあえず受付兼案内所に、短期滞在者用のビジネスホテル。

 あと、託児所と食事処と……」


 利用者アンケートの内容を思い出しながら、一つずつ列挙していく。


「う~トージにぃ!

 せっかくショッピングモールが出来たのに、観光案内所とホテル、食堂だけじゃ面白くない! カインマクビーにタピオカ屋台にジュリ〇ナは~?」


 礼奈のヤツ、何かだんだん遡ってないか?

 一周回って最近リバイバルされたやつだぞ、ソレ。


「……とりあえずゲーセンも作るか」


「!! やった~!

 これで夢のプリとクレーンゲームができるわ!」


「おう、遊べるところってアンケートにもあったしな」


 無邪気に喜ぶ礼奈にほっこりする。


「つー事で雄二郎、内装工事を頼めるか?」


 俺の隣で唖然としている雄二郎にお願いする。


「……お、おう。

 そりゃかまへんが、従業員はどないすんねん?」


「とりあえず山高市内でバイトを募集するかな。

 案内所には事務所を併設して、受付担当は村の人たちに相談してみる。

 あとは求人サイトにチラシに……純に頼むか~」


 急展開過ぎて頭の中が整理できていないが、まずは内装と人手である。

 やることをリストをメモ帳に書き出していく。


「内装以外の事は、私に任せていただけますか?」


「竹駒プロダクションと提携してる人材派遣会社がありまして。

 現在、地域振興を目的としたIターン型の人材募集プロジェクトを進めているのですが、ぜひ倉稲村をモデルケースにさせていただきたいです!!」


「え? いいんですか!?」


 美里さんの言葉に驚く。渡りに船な提案だ。


「内装関係は全面的にワイに任せてくれてええで。

 こんだけのショッピングモールを一瞬で建ててしまうほどのダンジョン、大手デベロッパーも黙ってへんと思うわ!

 ぜひとも仲介させてくれ!」


「マジかよ!

 でもさ、たちまち資源コイン20,000くらいしか元手がないぞ?」


「十分や!

 わずか1か月で50,000の資源コインを産出するダンジョンやで?

 いくらでも銀行から融資を引き出したる!」


「なん……だと?」


 美里さんと雄二郎。エキスパート二人のおかげで、とんとん拍子で話が進んでいく。


「さすがに工事の方は一瞬とはいかへんけど……数か月後が楽しみやな!」


「にはは! 倉稲都(みやこ)化計画が、着実に進んでいるようじゃの!」


 コンの言葉も、あながち大げさではないかもしれない。

 わくわくしてくるぜ……!


「凄い! 凄いね三奈ちゃん!

 あれだけ寂れてた倉稲村が……トージさんとコンちゃんのおかげで!」


「いやはや、凄すぎでしょ……。

 トージくん! 食堂は私んちに任せてくれない?

 母さんに話してみるわ」


「助かる!!」


 三奈の母親は、ネットで料理講座を開くほどのエキスパートで、三奈も料理人を志す料理好きだ。

 倉稲の特産品を使った絶品料理を作ってくれるだろう。


「はいはいっ! 試食はこのわたしが!」


「……あんたはびしびしダンジョンから資源コインうんえいひを回収してなさい」


「ぐはっ!?」


 調子のいいことを言う理沙を一刀両断する三奈。


「食堂がオープンしたら、探索のご褒美に飯をおごってやるから」


「!! ホントですかトージさん!」


「おう、理沙はコンを助けてくれたしな」


「やた~! トージさん大好き!」


 だきっ!


「よしよしよし」


「!! トージ、わらわもよしよししてくれぬか!」


「おう!」


 わんこ二人(コンは狐だが)をわしゃわしゃしてやる。


「「ん~♪」」


「はぁ……道は遠そうね」


 なぜかため息をつく三奈。


 こうして、倉稲村探索者ビジターセンター(15階建て)開発計画が無事発足するのだった。

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