第25話 ショッピングモールを作ろう

「ホントに神様レベルが上がったんですか?」


「おう! 付喪神コン改二じゃ!」


「す、すごい!」


 翌日、最寄り駅までユニ子とファンの皆さんを送った俺たちは、屋敷の居間に集合していた。


「むふふ、地脈の力がいつにもまして満ち満ちておるぞ~」


 山高市のショップで買ってやったデニムのオーバーオールを着て、美里さんの言葉にどや顔を浮かべるコン。

 俺の膝の上でプリンを頬張りご機嫌である。


「どうやら今まで地脈の力が抑えられていたみたいですね」


 常識外の事態に困惑した俺は、ダンジョンに関する全ての情報を美里さんに開示することにした。


「SSSランクの上? し、信じられません……」


「地脈量2,500GP/h!?

 Tokyo-Firstの50%近いやないか!」


 地脈測定器を操作していた雄二郎が驚きの声をあげる。


「な……僅か5階層のダンジョンで、ですか!?

 常識外にもほどがあります!」


「ワイの知る限り、ダントツ日本記録や!」


「にはは?」


「え~っと?」


 専門家二人は驚いているが、どの程度凄いのかいまいちピンとこない俺たち。


「ほほう、2500という事は地脈パワーが2500という事だねトージさん!」


「モクシィのフォロワー換算で1万人規模ってことね?

 あたしは1000人超えたけど!」


「お、おう」


 ……絶対分かってないだろ理沙礼奈姉妹。


「あ~、ダンジョンは基本的に深く攻略すればするほど地脈の力が強くなるんや」


 そんな俺たちに呆れたのか、テレビにノートPCを接続して説明してくれる雄二郎。


「ふんふん」


 モニターの中で、Tokyo-Firstと俺たちのダンジョンのグラフが重なる。


「到達深度97階層のTokyo-Firstの半分近い地脈エネルギーを、この5階層までしか到達してないダンジョンは持っとることになる」


「つまり、Tokyo-Firstの10倍近いポテンシャルがあるって事か?」


「さすがにそこまで単純計算やないが、ぶっ飛んでるのは確かや」


「なるほど……」


「にはは、トージぃ~♪」


 プリンを食べ終え、すりすりと甘えてくるコン。

 全身から生気があふれており、両目がキラキラと輝いている。

 彼女の付喪神力(?)はとんでもないことになっているようだ。


「地脈の力があふれそう。はやくすきるを使ってほしいのじゃ♡」


 ゴロゴロとあざといおねだり。

 くっ、可愛すぎるだろ!


「それじゃ、アレを造るか!」


 このままうずうずさせとくのも可愛そうだ。

 男だって徹夜仕事明けはウズウズするもんな(多分違う)!


 俺は、新たに解放されたダンジョンスキルを試してみることにした。



 ***  ***


「とりあえず、あの辺にしよう」


 倉稲山に穿たれたトンネルを出てすぐに、広大な空き地がある。

 大昔は牧草地だったそうだけど、川から遠く高台で、農地にするには不向きな荒地。


 ヴンッ


 俺はダンジョンステータスを展開し、赤スキルを選択する。


 =======

 ■基本情報

 管理番号:D21-000001

 ランク:SSS+

 所在地:岐阜県山高市倉稲地区(旧倉稲村)

 階層情報:5/???(クリア済み/最深部)


 ■ダンジョンスキル

 …………


 赤スキル(施設建築)

  ・道路トンネルLV4……(資源コイン消費:5000)

  ・温泉掘削LV2……(資源コイン消費:1000)

  ・大型商業施設LV5(駐車場5000台付き)……(資源コイン消費:30000)


 ■資源コイン

 54,500

 =======


「大型商業施設……Aコ〇プかな?」

「田舎者すぎでしょ理沙ねぇ! マ〇キヨよ!」

「うおおお、すげぇ、全国チェーン!?」


「…………」


 悲しいほどの田舎トークを繰り広げる理沙礼奈。

 くくく、二人を驚かせてやるか。


(まあ流石に、イ〇ンモールは出来ないだろうが)


 地方都市によくある、広い駐車場を持つ3~4階建てのショッピングセンター。

 倉稲村探索者ビジターセンターを置くには最適だろう。


「わくわくじゃの! トージ!」


「おう!」


 少し大きくなっても、コンの定位置は俺の肩の上だ。


 俺は大型商業施設LV5を選択すると、資源コインをチャージする。


 ヴィイイイイインッ


「んっ、術式の展開正常……地脈への接続も確認したぞ!」


 ゴゴゴゴゴッ


 これだけ大規模な赤スキルだ。

 僅かに大地が振動する。


「ほ、本当に商業施設が出来るのでしょうか?」


「トージのスキルはヤバいですよ?

 その辺今度街のサテンでゆっく……」


「うわあああああ、凄い地脈の光!!」


「…………」


 いつも通り脈のなさそうな雄二郎を横目で見つつ、赤スキルの発動状態を確認する。

 大量の資源コインを使うから時間はかかるが、正常に稼働しているようだ。


 ゴゴゴゴゴゴ……


 ドンッ!


 豪快な音と共に、300m×500mほどの荒れ地が更地になった。


「「……は?」」


 あれ、ちょっと効果範囲が広いんじゃ?



 どどどどどどっ



 倍速再生したもやしの発芽みたいに、地中から建物がせり出してくる。


「にはは! トージの部屋にあった”世界のもーる100選”という書物を参考にさせてもらったぞ♪」


 またマニアックな本を……ちなみに、俺が勤めていた建築事務所で担当した案件の参考に買ったものだ。


 ……って、まてよ?


 その本に載っているのはメガマート初め、世界でも最大規模のショッピングモールばかり。


 コンはまさか、そいつを再現するつもりなのか!?



 バキバキバキッ



 まず、ドーナツ型の建物が敷地の中央に出現する。

 見上げるほどの高さを持ち、屋上には「Kon-Mart」の文字が。


「え、えっと?」


 バキバキバキッ


 唖然とする俺たちの目の前で、ドーナツ型の建物を中心に翼を広げるように3階建てのモール部分が形作られていく。

 丸屋根で、建物の長さは150メートル以上。

 片方だけでも並みのイ〇ンモールに匹敵するだろう。


「よし、完成じゃ!」


 どーん!


 最後にコンクリート舗装された広大な駐車場が出現し、満足げに汗をぬぐうコン。


「「「「「はあああああああああっ!?」」」」」


 目の前に現れた世界最大規模のショッピングモールに、ただ叫ぶことしかできない俺たちなのだった。

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