相続したGランクダンジョンがSSSランクに進化した ~【収穫10倍】潜るたびにチート効果ゲットでうっかり世界の覇権を取ってしまう【経験値10倍】~
第14話 ダンジョン無双(しまった、鍛えすぎた……)
第14話 ダンジョン無双(しまった、鍛えすぎた……)
「理沙! 座標:東五・南三の赤鬼を狙え!」
「はいっ!
て~いっ!」
ぶんっ
すらりと伸びた理沙の右足が、ヒグマほどもある赤鬼の顎を捉える。
バゴッ!!
グエエエエエッ
一瞬で意識を刈り取られ、倒れこむ赤鬼。
ずずんっ
ギャオオオンッ!?
数体の狼型モンスターが倒れこむ赤鬼の下敷きになり、抜け出そうともがく。
「いまだ! 礼奈!」
「ほーい」
「「連射壱式!!」」
パンパンッ!
ビシュッ!
礼奈の銃と俺の和弓から放たれた矢が的確に狼型モンスターにとどめを刺していく。
「!!」
刹那、理沙の背後に回り込もうとしている赤鬼が”視えた”。
グオオオオオンッ
「理沙! 後ろだ!」
「!?」
理沙に向けて、赤鬼の棍棒が振るわれる。
バキッ!
「ぐっ……根性おおおっ」
棍棒を手甲で受け止める理沙。
それなりのダメージを受けてしまったようだが、全身の筋力を使いバランスを崩さない。
「理沙! そのままの態勢でいろよ?
遠射弐式!!」
ブンッ……どしゅっ!
青白い光を纏った矢が鬼を貫き、金色の資源コインに変える。
「トージさん、ありがとうございますっ!」
「おう、ダメージがきついなら言えよ? 回復するから」
「わたしはまだまだ元気ですっ!」
戦いが始まって数分で、俺たちは数十体以上のモンスターを倒していた。
*** ***
(凄い……!)
鮮やかな戦いぶりに、思わず目を奪われてしまう。
多数のモンスターを同時に相手取ることを前提にした戦い方で、特にトージの”視野”と指示が的確だ。
(これは、新しいわね!)
普通のダンジョン探索配信では見たことがない。
現代のダンジョンでは、同時に多数のモンスターが出現することがまずないため、仕方ないとも言えるが。
>うおおお、まさに無双シリーズじゃん!!
>こいつら新人ってマジ?
>リーダーの男もだけどさ、可愛い枠だと思ってた姉妹ちゃんもつえぇ!
>おいまて、この「穴守 統二」ってまさか……?
>もしかして「穴守 鉄郎」の関係者なん?
>ゆーて、穴守一族に現役の凄腕探索者はいなかったよーな?
コメント欄もざわついている。
トージの正体に気付き始めてる視聴者もいるみたいだ。
(ごくっ)
彼らの戦いを余さず記録できるよう、予備のドローンカメラを飛ばす美里。
無双バトルはいよいよクライマックスを迎えようとしていた。
*** ***
「よしよし、いい感じか?」
「うむ! 華麗であるのに優雅で……わらわも見とれてしもうたぞ!」
「へへ……修行の成果が出てますね!」
「ま、朝飯前ってところ?」
ふっ、と銃口に残った硝煙を吹き散らし、格好をつける礼奈。
(ちなみに銃は魔法力で生成された銃弾を放つので火薬を使わない。煙はあくまで演出である)
「みんなで鍛えまくったからな! コンのおかげだぜ」
もふもふの頭を優しく撫でてやる。
「くくっ、だんじょんの準備に少々骨が折れたがの」
「トージさんのブートキャンプ楽しかったですっ!」
「早朝と放課後の二部連でダンジョンに潜りっぱなしってどんなブラックよ」
「でも、強くなったろ?」
「ま~ね~」
モクシィのフォロワーが100人ほど増えてご機嫌の礼奈。
今の時代でも利用者はいるものである。
「倉稲の名を背負って、無様なことはできないからな!」
何しろ俺が探索者養成校に通っていたのは5年以上前の話。
進歩の速いこの業界の事である……25歳にもなってレベル40台の俺など雑魚と笑われても仕方がない。
危機感を覚えた俺は、コンにお願いして理沙たちと第1~第3階層に潜りまくっていたのだ。
クリア済みの階層では、ダンジョンスキルを獲得する事は出来ないが経験値と資源コインを稼ぐことはできる。
『コン、もっと……もっとだ! 俺たちを鍛えてくれ!』
『にはは! 梨甘味(すいーつ)を堪能し力を蓄えたわらわに不可能はない!』
どどどどどっ
『うおおおおおっ!?』
料理上手な村の女性陣(笠間姉妹除く)が次々と繰り出す梨スイーツを食べまくっているコンは絶好調で、たくさんのモンスターを各階層に配置してくれた。
『いくぞ、理沙! 礼奈!』
『は、は~いっ』
『いやちょっとトージにぃ! 敵の数が多すぎじゃない!?』
『やる気があれば何でもできる!!』
『『まさかの精神論!?』』
……ちょっとばかし鍛えすぎたかもしれないが、1週間で数千体のモンスターを狩った俺たちはそれなりのレベルに達していた。
「よし、そろそろ終わらせるか!」
配信を開始してから1時間がたとうとしている。
俺たちは新人探索者だし、あまり長いと視聴者さんが退屈するかもしれない。
「理沙、礼奈! サポートを頼む!」
だんっ
だいぶ数を減らしたモンスターの群れの中に飛び込む。
狙うは、群れの中心にいる黄龍(おうりゅう)だ!
「はいはい。
敏捷力強化弐式、幻惑弐式っと」
礼奈の間接術が発動し、俺の敏捷力が強化され、周囲の敵に幻惑術がかかる。
グオオオンッ!?
大幅に精度が落ちた鬼たちの攻撃を余裕をもってかわしていく。
「ふっ……!」
大技を使うため、右手に妖術力(魔力)を練っていく。
「トージさん、あぶないっ!」
ばきっ
理沙の飛び膝蹴りが、背後に忍び寄っていた小鬼を吹き飛ばす。
俺の背中は理沙が守ってくれるから安心である。
「サンキュー理沙!」
ブウウウンッ
「よし!」
チャージ完了。
俺は大きくジャンプすると、最奥にいる黄龍に向けて弦を引き絞る。
「奥義! 漆黒爆炎射技!!」
ゴオオオオオッ!
炎術を矢にまとわせ、一気に放つ。
ちなみに技名は俺の趣味だ。
コンをリスペクトして和風にしてみた……かっこいいだろ?
ドシュウウッ!!
まさしく炎の矢と化した一撃は黄龍に突き刺さり……。
ドオオオオオオオンンッ!
粉々に吹き飛ばしたのだった。
「と、いうことで」
俺は地面に着地するとドローンカメラに向けてポーズをとる。
「新人探索者の穴守 統二」
「はわわ!? おなじく笠間 理沙ですっ! 得意料理は梨の素揚げ!」
「アピールそこなの理沙ねぇ……あたしは笠間 礼奈、モクシィのIDはこちらなんでフォローよろ~」
「トージが大好きな付喪神のコンじゃ(ふんすっ)!」
「お前ら自由すぎだろ……」
「こほん! 俺たちが所有するこのダンジョンをみんなに狩り場として提供することを考えています。詳しくはまた発表するんで、配信者フォロー及びメンバーシップ登録よろしくお願いします!」
事前に美里さんから伝えられていた宣伝文句で締める。
俺たちはまだ探索者も配信者も新人である。
数人でも興味を持ってくれれば十分だろう。
「…………美里さん?」
なぜかカメラを構えたまま、固まっている美里さん。
「……はっ!?
は、はい、オッケーですっ!」
「ふぅ」
最後の美里さんの反応が少し気になるが、こうして俺たちの初ダンジョン探索配信は無事に終了したのだった。
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ここまで読んでいただいてありがとうございます!
カクヨムコンもいよいよ後半戦です。
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