第7話 初めてのダンジョン探索
「理沙、右だ!」
「は、はいっ!
とりゃ~っ!」
どがっ!
体重を十分に乗せた右ストレートが理沙に飛び掛からんとしていた小鬼(ゴブリン)を捉える。
ばしゅう
HPを削り切れたのか、資源コインとなり消える小鬼。
「礼奈、理沙の後ろ!」
「ほーいっ!」
ぱんっ!
礼奈の構えたハンドガンから放たれた弾丸が、理沙の背後から忍び寄っていた緑色粘液(グリーンスライム)を弾き飛ばす。
「ちょっ!? タマがわたしの耳を掠めたよ!?」
「……峰撃ちよ、理沙ねぇ」
「鉄砲で!?」
「よしよし」
第三階層の探索を始めて30分ほど。
探索はすこぶる順調である。
理沙と礼奈のコンビネーションは抜群(?)で、俺は指示を出すだけだ。
「ふふっ、さすがトージじゃな。
戦場が良く”視えて”おる」
「そ、そうか?」
さっきからコンがやたら俺を褒めてくれるので、何やらムズムズしてくる。
探索者養成校での俺の成績は下の中。
攻撃回避能力が優れていると評されたほかは、目立たない存在だった。
「その能力(ちから)が上位だんじょんでは重要になるのじゃ」
「ふ~ん」
コンはそう言ってくれるが、実戦経験が皆無なのでいまいちピンとこない。
「よし、二人ともいったん休憩にしよう」
初めての探索で疲れがあるかもしれない。
そう考えた俺は二人に声をかけるのだった。
*** ***
「んん~、あたし強くね?
こりゃ、マイモク100人増えちゃうかな~」
上機嫌で自家製タピオカドリンクをすする礼奈。
古い……と言いたいところだが最近リバイバルブームだったな。
=======
氏名:笠間 礼奈
種族:人間
経験値:933
級:7
生命力:112
術式力:63
筋力:22
敏捷力:21
妖術力:44
攻撃力:50
防御力:32
使用可能術式
筋力強化壱式
敏捷力強化壱式
幻惑壱式
使用可能技式
連射壱式
=======
「え~、礼奈ちゃんだけなんでレベル(級)アップが速いの!」
「……頭の差?」
「ひでぇ!?」
既にレベルが7に到達している礼奈に比べ、理沙のレベルはまだ4だ。
「あ~、それはだな」
姉妹喧嘩が始まってもいけないので説明してやった方がいいだろう。
「探索者の成長タイプには”早熟”と”晩成”が存在するんだ」
「「成長タイプ?」」
「一気にレベルアップして早めに仕上がるタイプと、じっくり上がっていくタイプだな。前者は使えるスキルも多くなるが、奥義的な大技は覚えにくい。
後者は使えるスキルは少なくなるが、レベルが上がると奥義を覚えるぞ」
養成校で学んだ授業を思い出しながら説明を続ける。
「なるほど……学校の成績通り、天才礼奈ちゃんにたいして理沙ねぇはズブいと」
「言いかたぁ!?」
「……最終的に到達する能力はそいつの適正次第だから、損はしないはずだ」
”視えた”二人の級(レベル)上限は150ほど……理沙と礼奈が優れた探索者適正を持っているのは確かである。
「んで、トージにぃのタイプはどっちなの?」
「確かに! 気になります!」
「俺は……」
結局探索者として開業しなかったので、自分の成長タイプなんて気にしたことなかった。
答えに窮していると、コンがてちてちと俺の前に歩み出て、ドヤ顔で宣言する。
「わらわの評定によると……両方じゃ!!」
「「チートじゃんっ!?」」
「は?」
……俺の成長タイプはなんか特別らしい?
知らんけど。
*** ***
「さあ皆の衆! あれがこの階層のぼすじゃっ!」
「マジかよ……」
探索を再開して1時間ほどで、俺たちは第三階層の最奥までたどり着いていた。
最奥にあったのは、奥行き100メートルはありそうな大広間。
まあそれはいい。
問題は、その広間すべてを埋め尽くす小鬼(ゴブリン)の群れで……。
ウオオオオオンッ!
気のせいか、中央部に竜(ドラゴン)までいないか?
「にはは! 級三の青龍(ブルードラゴン)とはいえ、少し気合を入れすぎたかもしれんの♪」
「おいコン、やりすぎだぞ!?」
「まだ現界したばかりで力の調整が上手くいかんでの」
「うぐぐ……」
出現してしまったものは仕方ない。
ボスモンスターを倒さないと階層クリアにならないのだ。
「理沙、礼奈!
お前たちは手前の小鬼を狙ってくれ。
あの青龍は俺に任せろ!」
正直全く自信はないが、レベル10にも満たない二人にドラゴンの相手をさせるわけにはいかない。
ブルードラゴン(青龍)の適正レベルっていくつだっけ?
「は、はーいっ! 気を付けてねトージさんっ!」
「もー! いきなしピンチじゃん!」
俺の指示に従い、小鬼の群れに向かっていく二人。
「ほら、理沙ねぇ!」
礼奈が筋力強化術や敏捷力強化術で理沙を強化。
「うりゃ~っ!」
攻撃力の高い理沙が主に小鬼を相手にする。
どがっ
理沙の上段蹴りが炸裂し、小鬼二体が吹き飛んだ。
「いいぞ!」
さすが仲良し姉妹のコンビネーション。
あっちは大丈夫そうだ。
「問題は、あいつか!」
俺は青龍に向けて大きくジャンプする。
「炎術壱式!」
牽制代わりに炎魔法を放つ。
びしゅっ
重ねて矢を射掛けることも忘れない。
グオオオオオンッ!
「……ちっ!」
ドシュウウッ
だがヤツもそれを予期していたのか、氷のブレスで火球を打ち消しやがった。
もちろん矢も一緒に止められてしまった。
それなら、電撃魔法で攻撃するか……。
だけど俺の電撃魔法のランクはまだ弐式、果たして通じるんだろうか?
「大丈夫! すていたすを確認してみるがよい!」
俺のステータスがなんだって?
コンの指示に従い、ステータスを開いてみる。
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氏名:穴守 統二
種族:人間
経験値:101,065
級:41(+1)
生命力:571
術式力:633
筋力:218
敏捷力:355
妖術力:423
攻撃力:256
防御力:355
使用可能術式
炎術壱式、弐式、参式
氷術壱式、弐式、参式
電撃術壱式、弐式、参式(new!)
回復術壱式、弐式、参式
使用可能技式
連射壱式、弐式、参式
遠射壱式、弐式
=======
「おっ?」
レベルアップしている!
たかが小鬼(ゴブリン)を数体倒しただけで?
「鉄郎が才能を見出し、わらわと共に歩む……そなたは”特別”なのじゃ!」
「!!」
コンの言っていた俺の成長タイプ。
早熟かつ晩成……レベルが上がりやすくて上位スキルも覚えられる、というチート。
「電撃術を使え!」
「お、おう!」
確かにブルードラゴンの弱点属性は電撃だったか。
「くらえっ!
【電撃術参式】!!」
ヴィイイイイイインッ
人間の背丈ほどもある稲妻の奔流は狙いたがわずボスである青龍を捉え……。
ドシュウウウウウンッ!!
その高圧電流と衝撃で、粉々に吹き飛ばしたのだった。
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