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視線で問いかけられたコーネリアは「こちらはバウムガルト公爵のご嫡男で……」と言いかけ、もはやフェルディナンドこそが公爵なのだと気づく。
「……フェルディナンド・バウムガルト公爵で、彼は守護騎士のランベルトです」
「そうか。公爵、この度は大変だった。さぞお辛いことだろう」
「ありがとうございます。フリーデン国を代表して感謝いたします。テルラーダ国におかれましても、一日でも早い復興へと繋がりますよう願っております」
「うむ。そうなのだ。この通り、わたしも朝から晩まで力仕事をしている」
「ヘンリック様もですか?」
目を丸くするコーネリアに、ヘンリックは両手を広げて見せた。市井に紛れていたら、誰も彼が皇太子とは気づかないかも知れない。
「その通り。幸い城と家族は無事だったからね。都には家や家族を失った民が大勢いる。民のために、自分にできることはなんでもしようと決めたんだ」
それは次期国王として、見習うべき行ないだった。けれどもエルマーはヘンリックの婚約者なのだ。胸は痛まないのだろうかと疑念を抱いていると、コーネリアの心中を察したようにヘルマンは重い溜息をついた。
「エルマー王女を忘れたわけじゃない。できることなら今すぐにでも全騎士団を率いて救出に向かいたい。だが……。コーネリア王女。どうかわかってほしい。わたしはこの国とここに暮らす民を護らねばならない」
「はい。わかっています」
コーネリアは視線を落とした。
わかってる。同じ立場なら、きっと自分もそうするだろうから。
「来年の夏……いや、秋には必ず兵を挙げてエルマー王女を助けると誓う」
秋――。あまりにも遠い。
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