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「……よろしくお願いします」

「だが、フリーデンの民はすべてわたしが責任を持って預かる。暮らしの目途が立つまで、家と金子も無償で与えると約束する。そなたはテレサの大事な娘。わたしの又姪まためいだ。これからは家族の一員として、この城で家族の魂の平安を祈るがよい」

「ありがとうございます」


 これ以上の温情は望めまい。

 コーネリアは固まった口角を無理やり引き上げると、膝を折って礼を取った。

 コーネリアとフェルディナンド、ランベルトにはそれぞれ部屋が与えられ、フリーデンの民は城の一部の部屋と、家屋を失ったテルラーダの民と同じ天幕へと案内された。

 まるでドラゴンの襲撃などなかったかのような、美しく清潔な部屋だった。

 薄い絹の垂れ布が下がる寝台が目に入った途端、どっと疲れが押し寄せてきた。

 コーネリアは寝台に倒れ込むと、花や鳥たちの描かれた天井画を見つめた。

手も足も重く、ぴくりとも動かせない。重い瞼を閉じた途端、コーネリアは深い眠りの底に落ちていった。





「コーネリア王女!」


 一瞬、誰なのかわからなかった。栗色の髪、思慮深そうな濃茶色の目。再会するのは何年ぶりだろう。ただ、目元の黒子は記憶にあった。


「……ヘンリック皇太子殿下?」


 いや。それよりもその姿だ。白いシャツは泥に汚れ、市井の民が穿くような吊革のズボンを身につけている。およそ皇太子とは思えない様相だ。


「昨日は挨拶もできずすまなかった」


 回廊を歩いて来たヘンリックに、共にいたフェルディナンドはこうべを垂れ右手を胸に、左手を背後にして礼を取り、ランベルトは左膝を立てて跪き騎士の礼を取った。

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