27

 旅の間、コーネリアはあちらこちらの荷馬車に乗っては、人々と話をした。

 絶望に打ちひしがれている者には、手を握り、共にフリーデンへ帰るのだと、希望と目標を与えた。

 やがて一行が森を抜ける頃には、白い雪雲から冷たい結晶が舞い降りてきた。

 フリーデンとは異なり、大きく広がった平野の中にあるテルラーダは、遠くからでも城壁に囲まれた都が見える。

 以前訪れたのは、父王と母妃、エルマーの三人でだった。コーネリアがまだ五つかそこらの頃だ。今思えば、エルマーとヘンリックの婚約が交わされたのだと思う。

 あの時、馬車の窓から見た景色は、見渡す限り緑の野が続いていた。そうして今、目の前に広がるのは、風にそよぐ薄茶色の草原だ。どんよりと重く垂れこめる雲も相まって、なんとも裏寂しい風景に思える。

 テルラーダの城は小高い山肌に沿うようにあった。

 少しずつ近づいていくと、やはり城壁や塔が崩れ落ちているのがわかる。

 幾つかのアーチ形の門を潜り街に入ると、あちこちから鉄を打つ音や男たちの声が飛び交っていた。

 ミュラーの報告通り、城に近づくにつれ、多くの家屋は崩れ、焼け出されているが、それでも裾野に広がるように栄えている街は無事のようだ。


「王女殿下。ここから先は歩いて参りましょう」


 ドラゴンの翼が家々の屋根や壁を吹き飛ばし、石畳も地面から掘り起こされたように散らばっていたからだ。

 バルトサールは、一行を被害を免れた郊外の広場で待機するよう二人の騎士に命じると、使者を務めたミュラーとフェルディナンドの守護騎士を務めるランベルトを伴って、コーネリアの背後に就いた。


「おお、コーネリア! よく参られた!」

「ヨハンソン国王陛下。此度は我らを寛大なる哀れみで受け入れて下さり……」

「よい」


 ヨハンソンは手をそよがせてコーネリアの形式ばった挨拶を遮ると、コーネリアに椅子を勧め、表情を険しくした。

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