21
皆がえ、と目を丸くする。
「コーネリア王女殿下。お気持ちはよくわかります。ですが、ドラゴンの住む地は西の果てにあるという噂だけで、本当かどうかさえわかりません。ここはフェルディナンド殿の仰る通り、我々の帰りを待って……」
いいえ、とバルトサールの言葉を遮った。
「あるかどうかじゃない。必ず見つけるのよ。そしてエルマーを助け出すの」
一国の王と王妃の葬儀とも思えない、埋めただけの父王と母妃の眠るこんもりとした土を見据えながら、誓うように言った。
「だめだ。テルラーダにさえ、馬車でしか行ったことのないようなあんたになにができる」
「お、おい、ランベルト」
「失礼だぞ!」
ランベルトの言葉に、その場にいた騎士たちがぎょっとして目を剥いた。
コーネリアはむっとした。
「別について来てほしいなんて言ってないわ」
「それが甘ったれだって言うんだ。あんた一人でなにができるというんだ。食料はどうする? 野宿なんてしたことがないだろう。きれいな馬車でなんて行ってみろ。盗賊に襲ってくださいと言っているようなものだ。あんたなんて売り飛ばされて……」
「やめろ、ランベルト」
静かだが、有無を言わせない声でフェルディナンドが制する。
ランベルトは睨み返すコーネリアの視線を受け止めていたが、ふいっと顔を背けると踵を返した。
「待て、ランベルト!」
副団長の声も無視して歩いていくランベルトに、どんどん怒りが溜まっていく。
「あの男の顔を知っているのはわたしだけなのよ! エルマーを助けられるのはわたしだけなの! あなたこそ、なにもできないくせに!」
声を張り上げたところで、ランベルトは振り向きもしない。
「すまない、コーネリア。ランベルトには後でよく言い聞かせるから」
フェルディナンドが眉根を下げるも、コーネリアは腹が立ってかあっと耳まで赤くなった。
「なんなのよ、あれ!」
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