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「王は? ヘンリック殿下は?!」

「王家の皆様はご無事です。ヘンリック王子殿下も軽い負傷だけで、今は民を救い出すために奔走しておいでです」

「エルマーのことは……」

「お気持ちはすぐにでも救出に向かいたいのでしょうが、まずは自国の民を救い出さねばならぬと……」


 コーネリアは拳を握りしめた。

 ヘンリックの選択は正しい。ヘンリックは次期国王だ。最優先にすべきは自国の民。婚約者と言えど……時期王妃となる身ならばなおのこと、民を一番に考えなければならない。


「しかし、我が国の民を受け入れるとのお言葉をいただきました。時間がかかるだろが、必ずやフリーデンにも力をお貸しくださると」

「それはありがたいわ。皆の体力が戻り次第、テルラーダへ向かいましょう」


 王と王妃の遺体は、騎士たちの手により古の王族の墓地へと葬られた。兄弟は巨大な石の下敷きになっているため、大地に還してやることもできない。墓地から見下ろす街には、そんな人々が大勢いる。


「……鐘の音が聞こえたからと言っていたわ。寄り道しただけだって」


 瓦礫の間に咲いていた野の花を手向けた。白い小さな花。エルマーの髪を飾っていた花だろうか。


「エルマーの幸せを願って打ち鳴らした鐘だったのに。そんな理由で街を破壊したの?」


 そんなばかみたいな理由で、と唇が震えた。


「赦さない。どんな理由があったとしても、罪のない多くの命を奪っていいはずはない」


 身を震わせるコーネリアの背後で、ランベルト始めとする騎士たちも、悲痛な表情で唇を一文字に結んでいる。彼らもまた、愛する家族や仲間たちを奪われたのだ。


「エルマーを助けに行く」

「コーネリア。わかっている。民をテルラーダに送り届けたら、騎士団が救助に向かう。きみはぼくと一緒にテルラーダで待っていてほしい」


 フェルディナンドにコーネリアは首を振った。


「わたしも行くわ」

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