15
「だめだ。テルラーダにさえ、馬車でしか行ったことのないようなあんたになにができる」
「お、おい、ランベルト」
「失礼だぞ!」
ランベルトの言葉に、その場にいた騎士たちがぎょっとして目を剥いた。
コーネリアはむっとした。
「別について来てほしいなんて言ってないわ」
「それが甘ったれだって言うんだ。あんた一人でなにができるというんだ。食料はどうする? 野宿なんてしたことがないだろう。きれいな馬車でなんて行ってみろ。盗賊に襲ってくださいと言っているようなものだ。あんたなんて売り飛ばされて……」
「やめろ、ランベルト」
静かだが、有無を言わせない声でフェルディナンドが制する。
ランベルトは睨み返すコーネリアの視線を受け止めていたが、ふいっと顔を背けると踵を返した。
「待て、ランベルト!」
副団長の声も無視して歩いていくランベルトに、どんどん怒りが溜まっていく。
「あの男の顔を知っているのはわたしだけなのよ! エルマーを助けられるのはわたしだけなの! あなたこそ、なにもできないくせに!」
声を張り上げたところで、ランベルトは振り向きもしない。
「すまない、コーネリア。ランベルトには後でよく言い聞かせるから」
フェルディナンドが眉根を下げるも、コーネリアは腹が立ってかあっと耳まで赤くなった。
「なんなのよ、あれ!」
「王女殿下、申しわけございません。騎士道にも背く行ない。厳しく対処させて……」
「まともに口を開いたと思ったら、あんな嫌味! ねえ! ランベルトってあんなやつだった? いえ、そうね。元々ああいうやつだったわ。なによ、全然成長してないじゃない。外見ばっかり! 騎士が聞いて呆れるわ! もうお父様もいらっしゃらないんだから、騎士なんてやめちゃえばいいのよ」
「コーネリア。ランベルトはドラゴンが襲ってきた時、誰よりも早く、真っ先に陛下の元へ駆けつけたんだ。ドラゴンに剣を突き立てようとして、すんでのところで尾をかわした。外見ばかりじゃ……」
「わかってる! わかってるわ!」
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