16
悔しい。ランベルトの言う通りだ。
お転婆だのじゃじゃ馬だのと叱られながらも、二の姫ということで好き勝手に甘やかされて育った自覚はある。馬に乗れると言っても、ヘインズ湖にピクニックに行っただけで、たくさんの従者に囲まれてのことだ。テルラーダにも馬車でしか許してもらえなかった。そんな自分が、どこにあるともわからないドラゴンの住む地まで行けるとは思っていない。思っていないけれど、行かなければならないのだ。
コーネリアは唇を噛みしめると、顔を上げ騎士たちを見やった。
「お願い。わたしも連れて行って。迷惑をかけると思う。足手まといになると思う。それでも、わたしは行かなければならない。エルマーを攫った男の顔はわたししか知らない。エルマーを助け出せるのはわたしだけなの」
「王女殿下……」
互いに顔を見合わせた騎士たちは眉根を下げている。
また我儘が始まった……そう思われているんだろう。困らせているのは百も承知だ。
「お願い……、お願いします」
コーネリアは頭を下げた。
「コーネリア!」
「王女殿下! おやめください!」
それでも頭を下げ続けていると、やがて小さな嘆息が聞こえた。
「わかったよ、コーネリア。一緒に行こう。まさかぼくだけ仲間外れにするつもりじゃないよね?」
「フェルディナンド殿。いや、しかし……」
別の騎士が戸惑いながら口を開くと、隣のバルトサールが片手で押し留めて口を開いた。
「わかりました。ご一緒いたしましょう。確かに、ドラゴンの使い手というその男の顔をご存じなのは王女殿下のみ。ただし、もう無理だとお思いになられたら、すぐにテルラーダに引き返してください。この旅がどんなものになるかわかりません。フリーデン国を再建するためにも、王女殿下は必要不可欠な存在なのですから」
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