12
翌日。広間に集まったのは百人にも満たなかった。内、衛士と城で働く者が二十三人。残りは街から集まった人々だ。半数は怪我人で、昨夜のうちに身罷った者が二人。
たったこれだけ……。
誰もが絶望に打ちひしがれた顔で、口を開く者もおらず、ただ床に座り込んだままじっとうつむいている。
それでも。
「皆、無事でよかった」
彼らが今、命あることを幸いとしなければ。
コーネリアが姿を現すと、皆一斉に顔を上げた。
「おお、コーネリア様」
「コーネリア王女様」
救いを求めるように差し伸べてくる手を、コーネリアは一人一人握り返した。その後をフェルディナンドが従者のようについてくる。
古から伝わる伝承では、フリーデン国は森と湖の女神リンデルに護られし土地にある。
大国が我が物にせんと押し入った時、疫病や死病が外つ国に蔓延した時にも、リンデルは森の狼と湖の水を持って護ったという。
あたかも、そんな女神を見るかのように縋りつく視線。父王も母妃もずっとこの重みを抱えて生きてきたのかと思うと、今更ながらに畏れを感じる。
「皆、この二日間、なにが起きたのかわからないと思う。わたしにもわからない。突如巨大なドラゴンがやってきて、わたしたちの大切なものを根こそぎ奪っていった。王と王妃、兄弟の命は奪われ、それから……エルマーも攫われた」
「エルマー様が……」
「おお、なんとお労しい……」
皆が落ち着くのを待って、コーネリアは口を開いた。
「皆、色々と不安だし心配だと思う。けれど今は我慢してほしい。テルラーダに使者を出したから、きっとすぐに助けがくると思う。死者を悼むのはそれからにしましょう」
「どうして生き残っちまったんだろうねえ」
老齢の女だった。
「息子夫婦も孫も、皆死んじまった。こんな年寄りが生き残ったって、なんにもできやしない。穴を掘って埋めてやることもできないのに、生きていたってしょうがないだけさ」
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