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春の訪れを祝う火祭りの三日後。ランベルトの叙任式が行なわれた。
フェルディナンドの婚約者であるコーネリアも、王と王妃と共に参列が許された。
枢機院、貴族、そして深い緑色のマントを肩にした王室騎士団の面々が広間をぐるりと囲む。普段だだっ広いだけの広間が、今日はひといきれが立ち込めて息苦しい。
黒いチュニックにバウムガルト家の紋章と爵位のバッジをつけたフェルディナンドは、堂々とした立ち姿で貴婦人たちの溜息を誘っていた。
「ランベルト・ディーツェル。前へ」
騎士団長の朗々とした声に、ランベルトが進み出る。
ランベルト。
姿を見るのは八ヶ月ぶりだ。
鋼色に光る
ランベルトは父王と王妃に礼を取ったが、コーネリアと視線が合うことはない。仕方のないことだが、ちょっと寂しいと言ったら、また小さなお姫様とからかわれるだろうか。
ランベルトはフェルディナンドの足元に跪くと、こうべを垂れた。
その肩にフェルディナンドの剣が置かれる。
「ランベルト・ディーツェル。汝、フリーデン王国の栄えある王室騎士団の一員として、常に忠誠、謙虚、誇り、誠実、忍耐、慈愛を忘れてはならない。汝、フェルディナンド・バウムガルトの守護騎士として、影のごとく離れず、兄弟のように共に生き、いかなる時も正義と尊厳のために闘うことを誓うか」
「わたしランベルト・ディーツェルはフリーデン王室騎士団の一員として、忠誠、謙虚、誇り、誠実、忍耐、慈愛を忘れず、主フェルディナンド・バウムガルトの守護騎士として、この命にかけて忠誠を誓います」
さながら一枚の絵画を見るような美しい光景だった。
水を打ったような沈黙の後、騎士たちが剣の鞘を床に打ち鳴らす。砲弾が落ちたような音に、城中が揺れるかのような振動。
すごい! すごいわ!
初めて見る叙任式に、コーネリアは唾を飲み込むと、祈るように組んでいた手をぎゅっと握りしめた。
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