12
わたしのせいで余計な謹慎を命じられたのだ。フェルディナンドの言う通り、まずは謝らなくちゃ。
コーネリアは、ずっと下を向いていたせいで凝り固まった肩をぐるぐると回した。
そうして、樫の枝が降り積もった雪を払い落とすようになると、ヘインズ湖から流れてくる水流の清らなさざめきが春の訪れを教えてくれる。
「できた!」
「まあ、コーネリア。ちゃんと見せて」
エルマーの求めに、コーネリアは慎重に木枠を外す。
白い布を広げると、エルマーはほうと吐息をこぼした。
「素敵だわ。おめでとう。頑張ったわね」
嬉しい! 何度もあきらめようと思った。
数えきれないくらい、たくさん指を針で突いた。絡み合う糸に癇癪を起して、放り投げたこともある。だけどどうしても気になって、エルマーに手伝ってもらって糸を切り、最初からやり直したのも一度や二度じゃない。
「……受け取ってくれるかな?」
「もちろんよ。お父様がこれを見たら、ご自分の手巾を作って欲しいっておっしゃるわ」
手放しで喜んでくれるエルマーの賞賛に、コーネリアは頬が緩むのを抑え切れなかった。
本当は、エルマーが言うほど上手にできたわけじゃないことはわかっている。細かすぎる模様はぼこぼこと盛り上がっているし、狼はしっぽが短すぎた。裏側に至っては、絡み合う糸が幾何学模様を描いている。
それでも、これは確かに自分が初めてやり遂げたものだ。
コーネリアは自身の枕元に置いて、毎日それを眺めては、ランベルトに手渡せる日を思い描いた。
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