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「ねえ、おねえちゃま。きょうもおわったらあそんでくれる?」
母妃の膝で絵本を読んでいる末の弟アルフォンスは、毎日刺繍が終わると遊んでくれるようになったコーネリアを歓迎しているようだ。
「うん、いいよ。なにして遊ぶ?」
「んとね、んとね。エッダにのるの」
「まあ、アルフォンス。外は雪よ。エッダには乗れないわ」
母妃は眉根を下げた。
エッダというのはアルフォンスが生まれた時に贈られたポニーだ。王子や貴族の子息たちは、幼い頃から馬に慣れ親しみ、騎士や剣士を目指す。
「じゃあ、厩舎でエッダのお世話をしようか」
「うん! おせわするー」
エルダーよりコーネリアに懐いているアルフォンスは、たまに鬱陶しいと思うこともあるが、午後に勉強を控えているコーネリアにとってはまさに救いの天使だ。
くるくると巻いている白金の髪の弟ににっこりと微笑み返したコーネリアは、それを見通しているエルマーに軽く睨まれたが、肩をすくめて誤魔化した。母妃もアルフォンスには甘いのを知っているのだ。
一方、フェルディナンドは父バウムガルト公爵に付いて登城している。領地の管理や、
城に上がる度、せっせと甘い焼き菓子や、美しいレースのリボンなどを運んでくるフェルディナンドは、尋ねられるままにランベルトの様子も教えてくれた。
「彼は今、騎士団宿舎にいるんだ。だからなかなか会えないんだけどね。春がきたら正式に叙任されるよ。ぼくはもう、剣では到底ランベルトには敵わない。陛下もランベルトが正騎士になれば、謹慎を解いてくださるはずだ。ぼくの守護騎士になるんだからね。よかったね、コーネリア」
「べ、別に。待っているみたいに言わないで」
顔を覗き込まれたコーネリアは、唇を尖らせてそっぽを向いた。
「そう? きみは彼に謝りたいんだと思ったけど」
「それはそう……だけど」
春がきたら、ランベルトは十八を迎える。目標だった正騎士になるのだ。
刺繍もあと少しでできあがる。ランベルトは受け取ってくれるだろうか。
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