05
そんなのだめに決まってるじゃない! だって事故だったんだもの。ランベルトのせいじゃないもの!
ディーツェルは王室騎士団の前総帥で、ランベルトの育ての親だ。養護院にいたランベルトを引き取り、幼い頃から騎士道を叩きこんできた。
フェルディナンドが十八を迎え成人したら、ランベルトは正式に叙任され、彼の守護騎士となる。守護騎士は、文字通り臣下が王に忠誠を誓うように、主に仕え、護り、生涯を捧げるのだ。フェルディナンドの守護騎士となるべく育てられてきたランベルトは、その日を楽しみにしていた。その任を解かれたら、彼自身の存在意義まで失ってしまうに違いない。
「姫様! どこへ行かれるんですか!」
乳母の雄叫びに驚く衛士たちの足元をすり抜け、コーネリアは父王の元へと走った。
だが、そう簡単にはいかない。城は広く、頭に白い包帯を巻きつけたコーネリアは、すぐに屈強な衛士たちに捕まってしまった。
「放して! お父様のところへ行くのよ! 放してってば!」
「うおっ! 姫、なりません! お部屋にお戻りください!」
「あいてて! こら、姫! 髭を引っ張らんでください!」
「いやっ! 放して!」
暴れまくっていると、騒ぎを聞きつけた衛士たちも集まってくる。うんと小さい頃から顔見知りの彼らは、コーネリアの護り手でもあり、時に遊び相手でもあった。
「まあ、コーネリア。なにを騒いでいるの」
「これはエルマー様」
「エルマー!」
衛士たちが一斉に右手を胸に当て、頭を垂れた。
エルマー・フリーデン・クラウゼ。コーネリアの二つ年上の姉である。歳が近いので、コーネリアはお姉様ではなくエルマーと呼んでいる。
母譲りの美しい白金の髪と、父譲りの金褐色の目。人々に親しみを持ってフリーデンの白百合と呼ばれているエルマーは、淡いラベンダー色のドレスを捌きながら歩いてきた。
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