03

「もし俺が負けた時には、鋼の剣をやろう」

「本当?!」


 コーネリアは目を輝かせた。


「ランベルト」


 フェルディナンドの咎めるような視線を、肩をすくめたランベルトは一蹴する。


「騎士の約束よ」

「承知しました、小さなお姫様」

「だからその呼び方……」


 左手を胸に当てて軽く頭を下げるランベルトにかちんときたコーネリアは、全部を言わないうちに地面を蹴った。


「やめてって言ってるでしょ!」


 コーネリアが放った一刀は空を切り、勢いのまま前につんのめった。


「おや。今、猫が通らなかったか?」


 うそぶくような言い方に、コーネリアはカッと頭に血を上らせた。


「ふん。猫なんて見なかったわ。侍医に診てもらった方がいいんじゃない?」

「なら気のせいだな。風が吹いただけだったのか」

「むうっ!」


 コーネリアは剣を振り上げた。

 右、左、もう一度左へ。ぶんぶんと空を切るコーネリアの剣を、ランベルトは受け止めるだけで自身の剣を振るおうともしない。頭にくる。

 それなら、とランベルトの正面を狙ったコーネリアの剣は、軽くあしらったランベルトの剣で真っ二つに折れた。

 あ、と思ったコーネリアの額が痛みを感じてたたらを踏んだ。


「コーネリア!」


 フェルディナンドが叫んだ。

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