第23話 スケルトン、力を得ても絶望する。
意識が戻ってきた・・・ドッと疲れた。
とりあえす、俺は生きている様だ・・・いや、スケルトンだから存在していると言うべきか・・・。
あの神と名乗る者は何者だろうか・・・それよりも、気持ち悪い。
視界が歪む・・・思考が中々定まらない・・・
そして、身体は全く動かせない。
床に伏せたまま動けない・・・これが代償か?
とりあえず、落ち着くまでしばらく待つしかない様だ・・・早く収まれな良いのだが。
そして、少し時間が経ち、少し落ち着いてきたと思いきや、ナッシュは異変を今まで以上に感じた・・・。
ん? 何だこれは・・・頭の中に膨大の知識が・・・くっ・・・くおぉぉ!!!
あの爺さんのせいか? くっ・・・キツイ!!!
イヤ違う!この感覚は!!! まさか!!!
またか! あの時の感覚!!! またお前か『オプティマ』!!! お前か、一体何なんだ!!! お前は何者なんだ!!! このスキルは!!! ウッ・・・ぐぁぁぁぁ!!! 頭が!頭が痛い!!! ウゴォォォ!!! あぁ・・・アァァァアァァァ!!!
「グゴァァァァ!!! アァァァァァ!!!」と叫び続けるナッシュ・・・。
ナッシュを中心に空間が乱れ始めた・・・。
慌てて神官たちは、空間の乱れた際に出た波動を抑えようとしたが、一瞬にして出てきた波動に巻きまれ、神官たちは一瞬で肉片になって消し飛んだ。
魔導士たちは同調魔法の刻印されていた為、それが功を奏し過剰なエネルギーを逸らす事に成功した・・・が、その際、同調魔法の刻印は、逸らしきれなかった分の膨大な力を受け止められず、全員の刻印が一瞬で砕け散る!
念の為、ナッシュ本人が失敗した際、自分ごと封印する為の刻印を施していた。
その同調魔法の刻印が砕けた瞬間、各自の封印の刻印が瞬間的に発動する!
封印の刻印によって圧縮されてしまった波動は、逃げ場がより無くなり、さらに強力になってしまう。
そのせいで、ナッシュの周辺から発生する波動により、魔導士たちの身体は肉が弾け飛び『バキバキッ』と音を立てて骨が折れた・・・既に致命傷と言ってもいい状態だ。
辛うじて、ナッシュの最終手段として行った封印の刻印が作用し、意識が途絶えそうでも封印作業を続けられている・・・。
薄れゆく意識の中、魔導士たちは願う『せめて封印だけでも』と・・・。
その頃ナッシュの方は・・・。
膨大の情報の処理が間に合わないのに強引に積み込まれ・・・。
頭の中で描かれる仮想空間には所狭しと魔法陣と方式が埋め尽くされていく・・・。
そして、その膨大なモノを支えるが如く膨大な力が加えられ・・・。
自身の存在が変異していくのが分かる・・・。
途轍もない苦痛と共に・・・。
部屋の中は波動が吹き荒れる・・・魔導士たちは、下手に触れたら肉体が砕け散る波動と言う凶器が飛び交う中で、刻印と言う頼りない盾一つで辛うじて凌いでいるに過ぎない。
『やはり、無謀だった』と後悔するナッシュ・・・。
ナッシュは薄れゆく意識の中で、せめて魔導士だけでもと思い・・・無意識に何かをつぶやいた。
その瞬間、今まで荒れくれていた時空の波動とは別の時空の波動が発生した!
しばらくして、神と言っていた爺さんの声が聞こえた・・・「とんでもない厄介なスキルを使いよって! まさか、この状態でワシを呼び戻し巻き込むとはな・・・くそぉ!不本意だが手を貸してやる! お前の配下の魔導士を借りるぞ!」
ナッシュは理解が出来なかった・・・正確には様々な情報を同時処理している為、思考のオーバーフローにより理解が追い付かなかっただけなのだが・・・。
「これも一興か? まぁいい、やる事をやったにも関わらず、切っ掛けを与えず終わらすのは神としては良い事ではないな・・・」
そう言うと、言葉にならない何かを叫んだ! その直後に以前に魔導士たちに施していた刻印が変化した!
爺さんが叫ぶ!「気合入れろ小童ども!!! 魔道の神髄を教えてやる!!!」
そして、とてつもない力・・・言葉と言うには生易しい重苦しい力の波動を魔導士たちに向け言い放つ。
「我、おぬしらに力と知識を与えん!!! 我とヌシとの間に道を繋げん!!! 我の手足として動かさん!!!」
そう言うと、魔導士達の身体から力の波動が発生し始めた・・・そして、徐々に力の波動が強くなるにつれ、爺さんの詠唱が何を言っているのか分からなくなるほど早くなっていく・・・。
死にかけていた魔導士たちの体が再生されていく・・・そして、彼らが詠唱する、円舞する。
そこからは、正に異様な状況だった。
一つでも誤れば、身体が消し飛ぶ凶器の様な波動が至る所に飛び交い、さらに荒れ狂った猛獣が暴れているが如く乱れた波動も飛び交う・・・その様な状況の中、歌う様に詠唱しながら踊っている様な状況だ!
力を・・・受け流し・・・相殺し・・・捻じ曲げ・・・乱れた力を規則的な流れに変えていく・・・。
動作一つ一つが無駄の無い魔道の発動の為の動き、激しく奏でる楽器の如く激しくそして正確な詠唱・・・荒れ狂う波動ですら取り込み、劇場で劇を行うが如く華麗に纏め上げてしまった・・・しかも、己だけでなく、他の魔導士を操ってだ!
『魔法?いや違う・・・極めると言う事は、ここまで凄いモノなのか・・・格が、格が違う!』とナッシュは思った。
「ナッシュ! ワシが出来るのはここまでだ! この先、成功するも成功しないもお前次第だ! 正しく狂え!突き進め! この際、過去の負の感情は捨てろ! 諦めや変な妥協は後悔を招くぞ!」
そして・・・ナッシュは無事に力を得る事に成功した。
膨大な知識、魔法式、方式、力の流動を得た・・・が、彼は絶望した。
その時には、もう、あの神はいない・・・。
「今の天災クラスがあと2つ来るだと!!! ふざけんな!バカヤロウ! これっぽっちの知識や力で、どうやって回避しろって言うんだよ!!!」
ナッシュはそう叫んで項垂れた・・・。
絶望しても進むしかない・・・それは分かっている。
分かっているが、余りにも酷じゃないか? 神様よ?
「何故、このタイミングなんだよ!それは無いだろう・・・」と彼は地面を殴りつけながら叫んだ。
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