第21話 スケルトン、準備完了する。

俺たちは修道院に乗り込み大聖堂を目指した・・・大聖堂には神官2名、他の者はここから避難していない。


こちらは、隊長と副隊長、防衛団専属の魔導士4名・・・。


神官長が語る・・・。


「魔道による音声拡声で状況が思った以上に緊迫しているのは理解しました・・・そして、聖域であるこの大聖堂にスケルトンですか・・・影響が無い所を見ると、不死化した聖者の様ですね、私がかつて経験した事のない相当量の力だ・・・しかし、あなたの持っている本は、どう見てもまともではない! ここで一体何をする気ですか!?」


ナッシュは正直に語った・・・。


「この本から、情報を引き出す・・・現時点で、とてつもない量のマナが消費されている! 恐らく中身は禁忌近いもので、情報を引き出す際に大量の力が奪われる事になるだろう・・・情報の取り出しが失敗しそうなら、封印する方に切り替える・・・合図を送るつもりだ、その時は俺ごと封印してくれ・・・恐らく、これ程の聖域だと何かあっても上手く封印出来るだろう・・・」


隊長が語る・・・。


「現時点で領内の麦の半分が『悪魔の爪』にやられた・・・」


神官は叫んだ!


「馬鹿な! 我々は、毎日欠かさず、お祈りしているのだぞ!! そんな馬鹿な話があるか!!!」と騒ぎ出す!


スケルトンは呆れながら語る・・・


「祈っただけで、何にもしていないのだろ? 原因を特定したか? その後、その原因に対しどう対策した? それが失敗した時の代案は? 全くしていないのだろう?」


神官は困惑した中、神官長はナッシュに問う・・・


「我々は間違っていたのですか? 神を信じた時点で?」


神官は、驚いた顔をして神官長の顔を見た!


ナッシュは答えた「神も悪魔も、そんな者はどうでもいい・・・結果が全てだ」


過酷な真実に神官たちが言葉を失う・・・しかし、そんな中、隊長は神官たちに苦言を言う・・・


「スケルトンのナッシュの力が尽きれば、全て終わりだ・・・犠牲になった者は報われず、今後、沢山の人が死ぬ・・・そして、あなた達は、人々を救う事が出来なかった教団として後世に名を残す事になる・・・もう一度言う、ナッシュの力が尽きれば終わりだ・・・時間が無い」


神官たちは、余りの状況による恐怖と絶望感、存在意義そんざいいぎ喪失そうしつ等により膝から崩れ落ちた・・・


ナッシュは皆に言う「今、我々が存在している事、発揮出来る力、目の前で起きている事は全て事実だ・・・それを正確に理解し、今出来る事に対し最善を尽くす・・・それが出来なければ、自分たちの存在意義は無い・・・」


防衛団専属の魔導士4名は、既に覚悟した眼で何をしたら良いか聞いてくる・・・そして、迅速に動く・・・そして、ナッシュに語る「死ぬ時は我々もご一緒ですよ・・・一人で背負わないで下さい」と。


ナッシュは言った「もし、生きていたら、色々面倒見てやるよ!ありがとな・・・」と。


魔導士の一人は言った・・・


「隊長!副隊長! いくらあなた方が優秀でも、命令系統に混乱が発生したら困ります! 今から退避して下さい! 死ぬのは我々だけで十分です!」


本当に出来た奴らだ・・・何だろうなぁ、死ぬかもしれないのに恐怖感は無く、満足感に満たされる。


対照的に神官たちは存在意義が揺らいだせいか、言葉にならない声を出して混乱している・・・やはり、信じていたものが無意味になる苦痛には耐えられない様だ・・・。


やはり、無理か・・・きついだろうな・・・今までんだ、発狂して暴れださないだけマシだろう。


分かっていても、行動に移すのは難しい・・・本来なら、相当の時間が必要だ! さて、どうすればいい?


そう思っていると、副隊長が神官たちを思いっきりぶん殴った!


そして、叫ぶ!


「お前たちは恥ずかしくないのか! それでもアドニカ領民か! 今できる事をやれ! 出来ないなら今すぐ殺す!」


あの温厚だった副隊長はそこにはいない・・・凄まじい殺気が神官に向けられている・・・彼がそこまで覚悟を決めるとは・・・いや、それが出来るから副隊長なのだろう・・・。


神官たち震え上がった、そしてガタガタ震えながら問う・・・何をしたら良いかと。


副隊長は、俺をちらっと見て、顎をくいっと動かした・・・どうやら、俺に指示させる気の様だ。


俺は神官たちに命令した「持ち込めるだけのマナエーテルをここに持ってこい!直ぐにだ! その後に聖水とヒールポーションを1:1の割合でここに持ってくる・・・命令無視や順番の間違いがあったら終わりと思え! 分かったな? よし、動け!」と言うと慌てて神官たちは行動した。


次に隊長と副隊長に避難しろと言おうとしたが、もう居ない。


行動早いな・・・その方が助かるが。


魔導士たちに説明し始める・・・。


「本来なら、魔法など一から説明するのだが、する時間が無い為、こちら側から強制的に同調をして動かす事になるだろう・・・失敗した場合に備え、封印魔法が直ぐに発動できる様に今から刻印する・・・その後、同調魔法の刻印だ! 刻印が終わり次第すぐに取り掛かる!」


その後、刻印が全て終わった頃には、マナエーテルと聖水とヒールポーションの準備が完了していた・・・これで、想定するトラブルに対処出来るか? 全然情報が無い中ではこれが最善か?


まぁ・・・なる様にしかならん! やる事は想定する事に対して最善を尽くすのみ!!!


神官たちに命令する・・・「相当強力な波動が発生すると思え! マナ不足や波動による負傷の対処はお前達がになえ!! それを抑えるのがお前らの仕事だ! 俺はマナエーテルの摂取は出来ん! そんな暇すら無さそうだしな・・・それに俺が全部飲んでも足りん可能性が高い! それなら最初から作業に専念した方がリスクが減るからな・・・ 失敗すると死ぬ! 無理と思ってもやれ! 理解したか?」


神官たちは首を縦に振った・・・。


よし、全員の覚悟は出来た様だ・・・先の結果が分からなくても突き進むしかない! よし、やるか!!!


俺は叫んだ! 「願わくは、災いを退く切っ掛けを! 罪なき領民に救済を! 正しく努力した者に祝福を!!!」


そして、思いがこもった言葉に反応し同調する様に、いわくの本の封印は解除し始めた!

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