第20話 スケルトン、絶望の病魔と戦い、覚悟を決める。

クソ!何なんだ!この本は? 持っているだけで力が吸い取られるぞ!


目眩を起こした後に、このザマか・・・久しぶりだ・・・死の予感を感じるこの緊迫感・・・弛んでいた思考が引き締まる恐怖感!


恐らく、これを開くには、命がけになるだろう・・・いや、死んでいるから、存在が消滅か・・・どちらにしても相当な覚悟は必要だ!


隊長が「それ、開かないのか?」と聞いてくる・・・。


「いや・・・こいつはここで開くのは不味い! 今の状態でも、かなりの力が吸い取られてる・・・念の為、ちゃんとした所で調べた方が・・・いや、封印した方が良いかもしれないな・・・恐らくだが、普通の人が触れただげでグチャグチャの肉片になり吸収されて死亡するのは分かる・・・」


「それほどか・・・思った以上に、厄介だな・・・」


「しかし、俺の本能が、確認するべきと訴えている・・・これに今回の惨事に関する知識の鱗片を感じた・・・準備を整えてから試してみようと思う・・・制御不能になりそうなら、俺を見捨てて、俺ごと封印しろ!」


隊長は困惑した顔で聞いてきた・・・。


「なぁ・・・なぜ、そこまでして俺達の為に頑張るんだ? そこまでの義理は無いだろ? 俺たちはそこまでの事をしていない・・・」


「なんでかなぁ・・・あえて言うなら、存在を許し、人として見てくれたからかなぁ・・・今まで・・・人として生きていた時も、人間として見てもらって無かったからな・・・10歳から人を殺し続け、そんな俺を、周りは化け物としか見ていなかった・・・騙し騙され、殺らなきゃ殺られる・・・そんな毎日さ・・・報われる事の無い日々・・・意味有る死を求めての旅・・・と言う所かな・・・」


「・・・それは、辛いな」


「金が全てだった・・・それしか、自分の存在意義を認める指標が無かったからな・・・だから一時、冒険者や傭兵をやっていた訳だ・・・」


「アドニカとは違う価値観だな・・・」


「羨ましかったなぁ・・・隣の国は正しく頑張ればチャンスが有り、努力した分だけ認められる・・・本当に羨ましかった・・・」


「・・・なんと声をかけて良いか分からない・・・すまんな」


「なぁ~に、これも俺のさ・・・気にするな・・・」


避難する領民を案内する者達を除いて、俺たちは、封印に適した修道院に向かった・・・。



修道院に着くと、まず最初に、子供とその関係者を全力で避難させた・・・。


その後に、修道院の周りの住民にも有無言わず避難命令を出す・・・。


その際、防衛団所属の魔導士に「1分、いや、一言だけでもいい・・・出来るだけ広範囲に声が届く様にしてくれ」と隊長が命令を下す・・・。


死を覚悟した様な目つきで語る隊長を見た魔導士が悟る・・・恐らく、死に勝る大惨事が発生したと!


魔導士は、無言でうなずき、音量の拡張させる魔法を全力で展開させた!


その苦痛は凄まじく、目から血を流し、吐血し、指先が破裂し、骨が砕ける音が聞こえる・・・それでも、魔法を止めない。


魔導士は、生涯で最後の言葉を絞り出す・・・。


「隊・・・長、今で・・・す!」 


それを聞いた隊長は速やかに大声を出す!


「ここは禁足地になる! 出来るだけ遠くに逃げろ! 避難地は、領主の館だ!」


その声が周りに広がった瞬間、魔導士は爆散した・・・。


隊長は泣いた!叫んだ!・・・しかし、命令を出し続けた! 皆を救う為・・・。


全ての者が、素直にその言葉に従い、領民は全力で領主の屋敷を目指した!


ナッシュは思った・・・なんて素晴らしい者たちだと・・・。



そして、ナッシュはこの時思った


『俺は全てを懸ける・・・これ以上、価値がある良き死に方は無い』と・・・


『願わくは、この領民に救済を! 正しく努力した者に幸福を!!!』と・・・



「さあ、勝負だ! 病魔ども! 掛け金はだ!!!」


ナッシュは、そう叫んで修道院に乗り込んだ!


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