第17話 スケルトン、過去を語る。

「なぁ・・・『ナッシュ』て名前、何処にもいるだろ・・・ナッシュの武勇伝なんて、聞いた事なんて無いよな?」


おれは、隊長に聞いてみた・・・もちろん、『知らない』と言う答えが返ってる事を期待してだが・・・


「おぉ!沢山知ってるぞ! 『狂乱のナッシュ』がだぞ! 初代アドニカ国王に次ぐぐらいな・・・」


おぉ・・・ナンテコッタ!


よりにもよって、超有名って・・・あぁ、どの様な黒歴史が拡散されているのか・・・マジで聞くのが怖い。


イヤイヤ、スケルトンで良かった・・・人間だったら絶対に動揺しているのが顔に出るわ・・・。


当時、とんでもない事ばかりやっていたからな・・・バーサーカーでもあそこまで酷くない。


まぁ、バレなきゃ何とかなるだろう・・・多分。


酔っ払った口調で隊長は語る・・・。


「あの時、ナッシュって名乗った時、『あの狂乱のナッシュたろう』と思ったしな・・・あんな事出来る奴、そう簡単にいないしな! あの古いダグを提示した時点でほぼ確信した」


・・・バレてる、やっぱりバレてる!


しかし、黒歴史は語りたくないし、面白おかしく改変された話など聴きたくもない・・・なんとか誤魔化さければ・・・


「偽物の可能性もあるだろ?」


「はぁ~そうなんだよ、だが俺が『狂乱のナッシュ』だと確信したのは、故郷が『ガレット』で100年間の歴史を知らない上に、教団を嫌い、善人を襲わないと言うところだな・・・他にも細かいところがあるがな・・・逸話通りの感じだしな」


やっぱり話逸らすの無理っぽいわ・・・。


「どう言う逸話だよ? 変な逸話じゃねえだろうな?」


「変な逸話かどうかは・・・う~ん、どうだろ? とりあえず、飲め飲め!」


勧めるられ、俺は一口、マナエーテルを飲みこむ。


他の酔っ払いが語り出す・・・


「代表的な話は、闇ギルド百日殲滅事変かな・・・」


それを聞いた瞬間、飲み込んだマナエーテルを噴き出した!!!


ゲボゲボ・・・ゴホッ!


隊長は「うぉ!! おい、汚たねぇな・・・てか、スケルトンでもむせるんだな・・・」と突っ込んでくる。


いきなりその話から行くのか・・・中々、エグいの出してくるなぁ・・・酒の席だぞ。


あれは、敵対した闇ギルドの人間を、最低1日1人以上拷問し撲殺し続けた事件だ・・・。


貴族のボンボンがくだらない我儘で、善良な親子を殺してしまったが事件の切っ掛けだ。


余りの理不尽さに俺は激怒した・・・。


そして、貴族のボンボンが隠蔽していた悪行の情報を聞き出す為、あらゆる手段・・・基本的に拷問だな、それらを行い、殺し屋から兵士、他にも暗躍した貴族まで、毎日殺し回った・・・。


大根おろしの如く、身体をすりおろしたり、指先からハンマーで潰し続けて、中々吐かない奴には途中で股間のイチモツを潰したり、水車にくくり付け水攻めで殺したりした・・・拷問の指南伝授の如く、様々な方法で殺し回ったせいで、他領の兵士の尋問効率が向上したとか言っていたな。


隊長が聞いてくる・・・実際はどうなの?と・・・。


仕方が無いので、正直に答える・・・。


「・・・てな訳で、毎日殺し回ったのは事実だが、殲滅は出来ていない・・・と言うより、現実的に考えてみろ、1人で全員殲滅出来る訳ないだろ! かなりの数の悪人は逃走してそれっきりだよ・・・それが普通だろ!」


だいぶ出来上がった隊長が語る・・・。


「そうだよなぁ・・・『なんか無理ある話だなぁ』と子供の頃から思ってんだよ! やっぱり、本人から聞くのが1番だわ! 物語だと結構盛った話になるしな・・・」


そんな話なのに周りが盛り上がる・・・理解出来ん・・・が俺の黒歴史が・・・一応、修正された。


それでも黒歴史なのは変わりないが・・・。



別の酔っ払いが聞いてきた・・・。


「砦にドラゴンけしかけたあの話は・・・」


あぁ、やったなぁ、そんな事・・・。


このまま戦ったら部隊が全滅するのが分かっていたから、無断で脱走し、たまたま近くにあるドラゴンの巣に行って『あそこの敵兵、あんたの巣を襲ってますよ』にみたいな感じで怒らして、けしかけようとしたんだよなぁ・・・


いざ侵入すると目の前にはドラゴンの卵が・・・


『流石に、これ、盗まれたら切れるでしょう』・・・と思った俺は、わざと見つかる様にドラゴンの卵を、巣から盗んで敵対した兵士が居る砦に逃げ込んだんだよなぁ・・・侵入するのに大変だったぜ!


流石に、当時世界6大竜と言われるだけあって、その暴れっぷりの凄い事・・・。


そして、竜が砦で暴れている内に、砦の適当な所に卵を置いてトンズラ・・・。


その後、その竜は卵を回収した後で、再度砦と王都を攻撃・・・国が崩壊した。



「・・・と言う奇策に出た、ヤラないとこちらが殲滅されるからな・・・しかし、相手国の王都まで襲うとは想定外だったが・・・流石に部隊には戻る事が出来なかった・・・ほとぼり冷めるまで、どこかで放浪の旅だよ・・・」


流石に、酔っ払った隊長でも酔いが冷め苦言を言った・・・


「当たり前だ!!! いくらなんでも、それは、やり過ぎだろ・・・失敗したら逆に滅んだのは自軍だぞ!!! ・・・以後、ここで、そんな事しない様に!」


「分かっているって! 今なら他の手があるから、その様な事する必要ない!」


「頼むから、大事起こす前に、一言報告はしてくれよ・・・」


他の酔っ払っいが沢山居たが、流石に今回の話は皆ドン引きした様だ・・・あっ、やべぇ・・・黒歴史が悪い方に大幅修正してしまった!!! やらかしたぁぁぁぁ!!!


他の酔っ払いが言った・・・「まぁ、彼が伝説の『狂乱のナッシュ』って事は分ったし、また後で、他の話も色々出来るだろう? 今日はこの辺で一旦お開きでいいんでないか?」と言った。


それを聞いた酔っ払い共は、「そうだな、いっぺんに聞いたら勿体もったいないしな・・・」なんて言って解散し始めた。


個人的には、一生お開きで良いと思うが・・・駄目なのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る